EPISODE 4Tipo 158 “Alfetta”

− F1創世記の王者 −Tipo 158 “Alfetta”(1950)
1950年に開催された第1回フォーミュラワン世界選手権(F1)。タイトルを獲得したTipo 158 アルフェッタ(Alfetta)は、遡ること1938年、“ヴォワチュレット”(シングルシーターの小型レースカー)レースを戦うために設計された。その後、トップカテゴリーを戦うマシンへと進化を遂げていくことになる。1939年に第二次世界大戦が勃発すると、アルファ ロメオは敵軍による爆撃などからマシンを守るため、158 アルフェッタをメルツォとアッビアテグラッソに避難させ、分解して農場の中に隠した。終戦後、掘り起こされた158 アルフェッタは、元の状態に修復され、ミラノ北部のマルペンサ空港および周辺の公道でテスト走行が実施された。戦後の混乱でレース環境は十分に整備されていないなか、アルファ ロメオは1946年にレース活動を再開。同年、アルファ ロメオは3リッターマシンのTipo 8C 308がいくつかの勝利をあげている。翌1947年にはアルファ ロメオは8つのグランプリに出場。このうち158 アルフェッタは参戦した4レースで全勝。まさに敵なしの状態だった。
しかし、1949年にアルファ ロメオはグランプリレースへの参戦を休止する。前年にトップドライバーだったアキーレ・ヴァルツィをレース中の事故で失い、冬季テストではジャン-ピエール・ウィミーユを、また翌年初めにはカルロ・フェリーチェ・トロッシが病気で命を落とし、3人のドライバーを失った。アルファ ロメオはグランプリへの出場を辞退し、この年は翌1950年に控えたシングルシーターによる世界選手権(F1)への出場のため、マシン開発やチームの準備に費やした。F1のレギュレーションでは、4.5リッターの自然吸気または1.5リッター・スーパーチャージャー付きエンジンの採用が定められたが、後者にあたる158 アルフェッタは、その排気量のまま進化が図られた。
この車の基本設計は1947年に遡り、2ステージ式のスーパーチャージャーを搭載し、最高出力は275hp/7,500rpm、最高速度は270km/hに達した。その後、シャシーの改良が重ねられ、1950年の初めまでに、エンジン出力は350hp/8,500rpm、最高速度は290km/hにまで引き上げられた。158 アルフェッタはその年、出場した11のレース全てで勝利をあげ、ジュゼッペ・“ニーノ”・ファリーナがタイトルを獲得。ニーノ・ファリーナと、同じくアルファ ロメオのドライバーとして活躍したファン・マヌエル・ファンジオ、ルイージ・ファジオリの3人は、その頭文字をとって、“3F(スリーエフ)”と呼ばれた。
この時代、アルファ ロメオは、乗用車の分野でも大きな一歩を踏み出した。初の量産車となる1900シリーズの登場である。1900で新たなマイルストーンを刻んだアルファ ロメオはその後も派生モデルを生み出していく。1900 スプリント/1900 スーパースプリントのデザインは、6C 2500シリーズに通じるデザインを受け継ぎつつ、よりシンプルでモダンなアプローチにより、新たな時代の到来を感じさせた。一連のデザインの流れを受け継ぐそれらのモデルが後に「ジュリエットーナ(大きなジュリエッタ)」や「ビッグジュリエッタ」の愛称で呼ばれることになるのも、決して偶然ではないのである。
エンジン | 直列4気筒縦置きエンジン |
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構造 | モノブロック式鋳鉄 軽合金ヘッド |
排気量 | 1884 cc |
ボア×ストローク | 82.5×88mm |
バルブ形式 | シングル オーバーヘッド カムシャフト・チェーン駆動 |
バルブ数 | 気筒あたり2バルブ |
圧縮比 | 7.75:1 |
燃料供給方式 | ツインチョーク式キャブレター |
イグニッション | コイル式 |
最高出力 | 100hp/5500rpm |
トランスミッション | 後輪駆動 |
クラッチ | 乾式多板クラッチ |
ギア | 前進4段+後退 |
車体形状 | クーペ |
シャシー | スチールモノコック |
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フロントサスペンション | 独立懸架式、 コイルスプリング+油圧ショックアブソーバー |
リアサスペンション | 独立懸架式、 プッシュロッド/アッパーウイッシュボーン+ 油圧ショックアブソーバー |
ブレーキ | 4輪油圧ドラム |
ステアリング | ウォームホイール式 |
燃料タンク容量 | 53リッター |
タイヤ(前/後) | 165×400 |
ホイールベース | 2500mm |
前後トレッド | 1320mm/1325mm |
車重 | 1000kg |
最高速度 | 180km/h |
生産台数 | 1796台(スプリント、SS) |