EPISODE 8Alfa 156

− ブランド史上最高のベストセラー −Alfa 156 (1997)
アルファ156(Alfa 156)の登場が、自動車業界に大きな衝撃を与えたのは疑う余地がない。ワルター・デ・シルヴァによるデザインの再解釈により、新たな方向性を示したスタイリング。FFプラットフォームのポテンシャルを引き上げたエンジニアリング。それらが相まって156は商業的な成功を収め、混迷期にあったブランドに大きな名声をもたらした。
1997年秋。リスボンでの発表会で披露された156は、かつてのジュリエッタやジュリアと同じように世界に賞賛をもって迎えられ、ブランド復権の大きな足がかりとなったのである。
世間では、その優美で魅惑的なスタイリングや洗練されたメカニズム、高次元のハンドリングが、156の成功のカギとなったといわれているが、もうひとつ忘れてはならないのは、イノベーション。156は、今日のスポーツモデルのあるべき姿を創造し、それを形にするという方法で作られた。その手段が正しかったことは、1998年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーの獲得や、68万台を超える出荷台数によって示されたといえるだろう。
プラットフォームは、フィアットグループの他モデルにも使われていたものをベースとしつつ、大幅な改良が加えられた。フロントはハイマウントアッパーアーム・ダブルウイッシュボーン式、リアは進化型のマクファーソンストラット式としたアルファ ロメオ独自のサスペンションレイアウトにより、正確なハンドリング性能を実現した。
パワートレインは、4種類のガソリンと2種類の革新的なコモンレール・ディーゼルを設定。エントリーモデルの1.6ℓツインスパーク16V*は最高出力120hpを発生し、最高速度を200km/hに届かせた。1.8ℓ(144hp)*および2.0ℓ(155hp)の直列4気筒ツインスパーク16Vユニットは、いずれも可変ジオメトリー・インテークマニフォールドが組み合わされ、従来モデルに比べて5hpの出力アップを実現。最上位モデルの2.5ℓV6 24Vについては、最高出力190hp、最大トルク22.6kg-mを生み出し、最高速度230km/hを誇った。トランスミッションはマニュアルのほか、電子制御式油圧アクチュエーターによりクラッチ操作を自動化したセレスピード(2.0ℓ ツインスパーク)と、オートマチックのQ-システム(2.5ℓ V6)が設定された。*日本では未発売。
そしてこの車の成功に大きく貢献したデザイン。ワルター・デ・シルヴァ率いるアルファ ロメオのデザイン部門、チェントロ スティーレによる洗練されたインテリアおよびエクステリアは、先鋭的でありながら、随所にアルファ ロメオのヘリテージを受け継ぐデザインエレメントが散りばめられた。ハリのあるボディラインやCピラーに隠されたリアドアハンドルは、156にクリーンでスポーティな表情を与え、クーペに見紛う外観に仕立て上げた。インテリアもブランドの伝統に敬意を払い、ドライバー中心のコクピットとされた。
主要諸元(2.0ℓ ツインスパークモデル)
エンジン | フロント横置き直列4気筒 |
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構造 | 鋳鉄モノブロック 軽合金シリンダーヘッド |
排気量 | 1969cc |
ボア×ストローク | 83×91mm |
バルブ形式 | DOHC 可変バルブタイミング |
圧縮比 | 10:1 |
燃料供給方式 | 電子制御燃料噴射 |
冷却方式 | 水冷 |
オイル循環方式 | ウェットサンプ |
最高出力 | 155hp/6400rpm |
最大トルク | 19.1kg-m/3500rpm |
トランスミッション | 5速マニュアル |
車体形状 | セダン |
フロントサスペンション | ダブルウイッシュボーン(コイルスプリング) |
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リアサスペンション | マクファーソンストラット(コイルスプリング) |
フロントブレーキ | ベンチレーテッドディスク |
リアブレーキ | ディスク |
ステアリング形式 | ラック&ピニオン(電動パワーアシスト付き) |
燃料タンク容量 | 63ℓ |
タイヤ(前/後) | 205/55VR16 |
ホイールベース | 2595mm |
前後トレッド | 1515mm/1509mm |
全長 | 4430mm |
全幅 | 1755mm |
全高 | 1415mm |
車重 | 1300kg |