仲間同士の手で形づくられた、温かな交流の場
澄みきった空気が心地よい信州・蓼科。10月26日(日)、都会の喧騒から離れたこの高原に、総勢130台ほどのアルファ ロメオが集まった。「アルファ ロメオ女神湖ミーティング」の会場だ。この日はあいにくの雨模様だったが、グリーンの芝生と唐松が、ひと足早く訪れた紅葉を引き立て、澄んだ空気をいっそう心地よいものにしていた。

アルファ ロメオ女神湖ミーティングは、2000年の初回開催以来、コロナ禍で中止になった年もあるものの、20回以上開かれてきた歴史あるイベント。人気の理由は、このすばらしい立地も大きいが、それだけではないようだ。

「イベントとして特別な進行は何もしていないんですよ。あるのはビンゴゲームだけ。あとは皆さんが好きなように語り合い、親交を深めてもらっています」と語るのは、主催者の渡辺智昭さん。主催者側が特に何か仕掛けなくても、毎年自然と盛り上がるという。さらに、募集開始とほぼ同時に定員に達すると聞き、このイベントの人気の高さにますます興味が湧いた。

――どんな方が参加されているのですか?
「ほとんどはリピーターで、10年以上、なかには初回から来てくださっている方もいます。アルファ ロメオを何台か乗り継いでいる方が多いですが、毎年、初参加の方もいらっしゃいます。“何年乗ってますか?” “どこで買ったんですか?” といった話をきっかけに、すぐに仲良くなれるんです。皆さん、本当にアルファ ロメオが好きで乗っていますからね。なぜ好きかといえば、運転していて楽しいから。だから同じ感覚を持つ人同士で会って語り合うことが楽しい。そこがアルファ ロメオの魅力なんじゃないかと思います」

――渡辺さんご自身のアルファ ロメオとの関わりは?
「最初に所有したアルファ ロメオは『145』でした。そのクルマには4〜5年ほど乗り、欲しいという学生さんが現れたので譲りました。その後『156』を買って2台体制の時期を経て、20年ほど前に『ジュニア ザガート』を購入し、今も乗っています。自宅の敷地に自作のガレージを建て、リフトを二基置いてメンテナンスを楽しんでいます」

アルファ ロメオ女神湖ミーティングを主催されている渡辺智昭さん。
そんな生粋のエンスージアストである渡辺さん。カロッツェリア・ザガートの手による1970年式ジュニア ザガートとの日々を楽しみながら、仲間との交流も満喫しているという。同イベントのスタッフ約10名もアルファ ロメオ好きばかり。みんなで作り、みんなで楽しむ。そんな手作りイベントならではの温かさが伝わってきた。
それでは、新旧130台以上のアルファ ロメオが集まった会場を見てみよう。
一目惚れから始まったブレラへの愛
2005年のデビューから、今年でちょうど20年を迎えたブレラ。ジョルジェット・ジウジアーロによるデザインは、彼がデザインに参画した159にも通じ、現在のアルファ ロメオにも継承されている3眼ヘッドライトが特徴だが、このクルマの真骨頂は、なんと言っても独特のリアビューだろう。

グレーのブレラで来場された小林純一さんと敏子さんは、イタリアでこのクルマを見かけ、一目惚れして購入に至ったという。
「20年ほど前、新婚旅行でイタリアに行ったんです。ちょうど日本でブレラが発売される直前だったのですが、ミケランジェロ広場の前を走り抜けるブレラの姿を見て衝撃を受けました。そのイメージがずっと頭から離れなかったんです。ネーミングは美術館や美大等があるミラノのおしゃれなブレラ地区から付けられており、まさにアートをイメージして冠したのだと思います。美大卒の僕としてはブレラとの出会いに不思議な運命を感じずにはいられませんでした」と、ブレラとの忘れられない出会いを振り返ってくれた。

その後、時を経て念願のブレラを手に入れた小林さんは、
「もう20年前のクルマなのに古さを感じません。こういうデザインはなかなか出ないと思います。ジウジアーロが“自分が乗りたいクルマ”としてデザインしたというエピソードがありますが、そんなストーリー性も含めて気に入っています」と愛車の魅力を語ってくれた。
20代オーナーのジュリア物語
続いて目に留まったのは、ビンテージモデルの「ジュリア」。オーナーは20代の谷中春斗さんだ。お父さんが生粋のアルファ ロメオ好きで、幼い頃から常にアルファ ロメオが身近にあったという。
「小さい頃は、自転車をぶつけてはいけないから父のアルファ ロメオには近づくなと言われていました。当時は“誰がこんなクルマ乗るか”と思っていたんですが、年齢を重ねるうちに“やっぱりいいな”と感じるようになりました。18歳のときに父から『147』を譲られ、その後は家にあった『75』で通勤するようになり、古いアルファ ロメオもいいと思うようになりました。それで19歳の時にこの『ジュリア』を購入し、今年で7年目です」

そんな英才教育を受けた谷中さんに、現代のアルファ ロメオについても聞いてみた。
「新型ジュリアにはまだ乗っていませんが、誕生したときは本当に嬉しかったですね。いつかは乗ってみたい。同世代にもアルファ好きが結構いて、ミーティングで集まったりしています。自分は母のお腹の中にいる頃からアルファ ロメオに触れているので、アルファ ロメオはもはや自分の一部です。これからもずっと乗り続けると思います」

福岡から17時間かけてご来場
『145』オーナーの宮原芳紀さんは、なんと福岡からフェリーで17時間かけて来場。しかも2000年の初回にも参加したベテラン・アルフィスティだ。愛車は『145』で、ほかにも『スパイダー(115系)』や『147』も所有しているという。

「最初に『145』を買ってから、もう20年ほどになります。以前は国産車やドイツ車にも乗りましたが、『145』に出会ってからはアルファ ロメオにどっぷりです」と笑顔で話す。
さらに、
「自分にとってこんなに気持ちの良いクルマは他にありません。そして、気持ちの良い場所で、気持ちの良い仲間たちと、素敵なクルマを眺めながら話せるのが最高です。肩肘張らずに楽しめるし、アルファ ロメオ女神湖ミーティングは遠くても“また来たい”と思えるイベントなんです」とその魅力を語ってくれた。

ジュニアに寄せる“使いやすさ”の実感
さらに会場には、デビューして間もない『ジュニア』の姿も。しかも色違いで2台並んでいた。それぞれのオーナーさんに話を伺った。

まず『ジュニア イブリダ スペチアーレ』で来場していた金井さん夫妻。ご主人は『ジュリエッタ』に乗っており、『ジュニア』は奥さま用に購入されたという。
「購入理由は、女性でも扱いやすいサイズであること。ハイブリッドで燃費がよいこと。そして職場にも乗っていくので、奇抜すぎないデザインが決め手でした。実際に乗ってみると本当に便利。大きさも扱いやすく、車庫入れではバックカメラが助かります。バックドアが電動で開くので、買い物時の荷物の出し入れも簡単で、とても扱いやすいです」と奥さま。

ご主人は、
「アルファ ロメオはスピードを出していなくても気持ちよく曲がる感覚が好きなのですが、ジュニアもその“アルファ ロメオらしい味付け”がされているところが気に入りました」と語ってくれた。
ジュニアとともに刻む家族の新章
続いて、納車からわずか1週間の『ジュニア イブリダ プレミアム』で訪れていた田村さんファミリーにお話を聞いた。『ジュニア』購入の決め手はサイズ感だったという。
「もう1台、『ジュリエッタ』があるのですが、ジュリエッタでは少し躊躇するような狭い道でも、ジュニアだと気にせずに走れるんです。そして見た目。特にフロント周りが気に入っています。全体的にデザインがまとまっていて、コンパクトなのに大きく見える感じも好きです」

走りについては、
「先週納車されたばかりなのでここに来るのが初のロングドライブだったのですが、高速道路も含めて2時間半ほど走ったところ、とても楽でした。排気量は1200ccなのであまり期待していなかったのですが、上り坂も軽快で、パワー感も十分。もう手放せないな、という気持ちになってきましたね(笑)」と話してくださった。

新旧のアルファ ロメオが集い、長年乗っている方から最近乗り始めた方まで、年齢も所有歴も関係なく、参加した皆が心から楽しんでいたアルファ ロメオ女神湖ミーティング。その心地よい空気感は、作ろうとして作れるものではないだろう。アルファ ロメオが好きで、好きなクルマに乗る者同士、気持ちよく時間を過ごしたい。そんな主催者や参加者のささやかな思いが、自然と空間を満たしていたのだ。イベントが終わり、笑顔で手を振り合いながら会場を後にする人々の姿を見て、改めてそのことを確信した。
| Text: | 曽宮岳大 |
| Photo: | 望月勇輝(Weekend.) |