〜アルファ ロメオ初のEVは、情熱と洗練をまとった‘小さなイタリアン’〜
イタリア車といえば「情熱」や「官能」といった言葉が似合いますが、その筆頭に挙げられるのがアルファ ロメオ。これまで数々の名車を生み出し、走る歓びや所有する歓びを提供してきたアルファ ロメオが、ついに本格的にEVの世界へ足を踏み入れました。
アルファ ロメオが送り出す、初めてのピュアEV「ジュニア エレットリカ」。
名前の響きからして期待感満点で、「ジュニア」という響きには若さや軽快感が漂い、「エレットリカ」(🟰電気)が加わることで、‘若くて新しいアルファの挑戦’を象徴する名前となっています。ジュニアにはハイブリッドモデルの「ジュニア イブリダ」もあり、イブリダ(🟰ハイブリッド)と「ジュニア エレットリカ」の2本建で魅力をアピールします。

まずはスタイリングから。
全長約4.2mのコンパクトクロスオーバーというパッケージングは、日本の道路環境にもフィットするサイズ感ですが、見た感じ小さいとは感じません。

フロントにはアイコニックなアルファのアイコン、スクデットグリル(盾型グリル)。両サイドにはアルファ伝統の3➕3のLEDマトリックスヘッドライトが配置され、シュッとした鋭い眼差しで一目でアルファロメオとわかる演出。中でもインパクトが大きいのは、スクデットグリルにアルファ ロメオのロゴの中心にあるミラノ市の紋章の十字架とヴィスコンティ家の紋章である「ビショーネ」(蛇)が大きな影絵のように描かれ、アルファ ロメオの紋章が2段構えで強調されます。

後ろ姿もブラックのトリムで引き締められ、スポーティさと上質感を兼ね備えたデザインですが、ブラックで縁取られたテールランプがセクシー。そしてリアエンドを垂直にスパッと切ったようなデザインは、1960年代にアルファ ロメオが空力特性のために他社に先駆けて導入した「コーダ・トロンカ」デザインを採用。
ボディラインとシルエットも秀逸で、直線を一切使わない曲線のみのボディ形状は、まさに曲線美そのもの。それらが相まって、小柄なのに誰より注目を集めるイタリア女性のようなオーラを放っています。

室内に乗り込むと、そこにもイタリアらしい遊び心が広がっています。
インパネ中央のデジタルクラスターは、視認性抜群。必要な情報を直観的に把握することができます。エアコンの吹き出し口には四葉のクローバーをモチーフにしたデザインが施され、中央にはビショーネが。シンプルな中にもユーモアが忍ばされています。
シートもお洒落〜。ファブリックのシートはテクノレザーとのコンビネーションで、中央部分が赤。ですが、これ見よがしな赤の使い方ではなく、大人っぽいダメージジーンズのような色合い。さすがです!しかも絶妙なシートの沈み込みでしっかりと体を支え、長時間のドライブでも疲れにくそう。インテリアの質感も上々で、アルファらしいドライバーオリエンテッドな空間です。
今回、試乗したのは受注生産の「ジュニア エレットリカ プレミアム」。
搭載されるのは54k W hのリチウムイオンバッテリー。航続距離は約494km(WLTCモード)と日常使いには十分。モーター出力は115k W(156ps)、最大トルクは270Nmを発生し、日常使いには十分なスペック。
モードは「ダイナミック」「ナチュラル」「アドバンスド エフィシェンシー」の3種類が用意され、走行シーンや気分に応じてキャラクターを変化させます。「ダイナミック」(スポーツモード)では、アクセルレスポンスが鋭くなり、ステアリングも引き締まったフィールに。「エフィシェンシー」(エコモード)では効率を重視しつつも‘運転する楽しさ’はそのまま。さらに「B」ボタンを押すと回生ブレーキが強くかかり、エネルギー効率を高めます。また、ドライブ気分を高めたい時には、エンジン音を再現する「エモーションサウンド」もあり、アルファ ロメオらしい官能的なサウンドを車内外に響かせることもできます。

今回も向かったのは、横浜みなとみらい。観覧車や高層ビルが立ち並ぶ都会的な風景は、居心地が良いだけでなく、ドライブ気分を盛り上げてくれるから好き。ショールームのガラスに映り込むジュニア エレットリカをよりスタイリッシュに見せてくれます。
まず感じるのは、発進の滑らかさ。信号待ちからスタートし、ペダルを少し踏みこむとスーッと音もなく滑り出します。モーター特有のリニアなトルクがすぐに立ち上がり、街中でのストップ&ゴーはストレスフリー。エンジン音がない分、低速域では上品な静けさに包まれます。狭い路地に入っても、コンパクトなサイズのおかげでストレスゼロ。ステアリングは小さな操作にも反応して、車体が気持ちよくついてくる感覚。

そうなると、そのまま少し足を伸ばしたくなり、みなとみらいから高速に乗って東名高速道路方面に。横浜町田から東名に入ったところでアクセルを強めに踏み込みます。一度アクセルを強く踏み込むと、途端に力強い加速が始まり、トルクで一気に背中が押される感覚に。車線変更でもステアリングを切った瞬間に車体がスッと移動し、これがいわゆる‘意のままに操れる感覚’を実感します。直進時も安定感が高く、100km/hでも落ち着いています。
そしてこんな時、試したくなるのが‘スポーツモード’。デフォルトは「ナチュラル」モードですが、よほど暑い日でない限りは「アドバンスド エフィシェンシー」(エコモード)に切り替えて走ることが多いのですが、「ジュニア エレットリカ」には、アルファ ロメオの官能的なエンジン音を再現するシステム「サウンドシンセサイザー」機能もあるので、スポーツモードにする時はエンジン音の演出を楽しむのも面白い。


今回はコーナリングを楽しむコースではありませんが、低速でもアルファらしい俊敏なハンドリングが光ります。ステアリングの切り始めに対して車体が遅れずについてくる感覚は、まさにアルファのDNAを感じるポイント。EVだからと言って退屈な走りになることはなく、むしろ重厚感のある安定性と軽快なハンドリングのバランスが絶妙です。

そしてEV生活に欠かせないのが充電。「ジュニア エレットリカ」は、急速充電を使えば10分で約100km、30分で10〜80%のチャージが可能。自宅に普通充電器を設置すれば、夜に帰宅してプラグを差し込んでおけば朝にはフル充電に。スマホを充電するように充電が日常のルーティーンに自然と溶け込むことでしょう。私の場合は自宅に充電器が無いので、自宅からほど近い90k WhのCHAdeMOの急速充電器で充電を一度体験。充電を始めた時の電池残量は62%で、その時点の航続可能距離は216km。33分の充電時間で電池残量は95%、航続可能距離も380kmに。その時の充電量は18.8k W hでした。

▲上記の充電時、エレットリカのデジタルクラスター(左)と急速充電器のモニター(右)の表示

毎日の通勤や買い物といった日常シーンも、ジュニアに乗れば特別な時間に変わります。小柄でも際立つ存在感は、乗る人のスタイルを格上げしてくれるはず。
日常を華やかに、そして未来志向に彩りたい、そんなドライバーにこそ、この‘イタリアの小悪魔’をおすすめしたいです。
Text: | 吉田由美 |
Photo: | 鈴木雅人(weekend.) |