※記事内の車両情報および写真は欧州仕様車のものとなります。あらかじめご了承ください。
イタリアはトリノにあるアルファ ロメオのグローバルデザインセンター「Centro Stile(チェントロ・スティーレ)」でフェイスリフトを行ったトナーレのデザインについてお話をうかがう機会をいただいた。
自然光がたっぷりと降り注ぐエントランス スペースでは大きな森に咲く一輪の真っ赤な花のようなハッとするほど鮮やかな色を放つブレラ レッドのトナーレが静かに出迎えてくれた。従来モデルと雰囲気が違うのはすぐに分かったが、どこがどんな風に変わっているのだろう。

アレハンドロ・メソネロ=ロマノス氏
「今回のフェイスリフトが果たすべきミッションは極めてシンプルです。ブランドバリューをさらに磨くこと、エンジニアリングの向上と改善、そしてビューティネスの追求です」と、今回インタビューを行ったアルファ ロメオ チーフデザイナーのアレハンドロ・メソネロ=ロマノス氏。
3連LEDライトの目元の印象は変わらぬものの、トライローブ(中央の盾型グリルと左右のエアインテークで構成される三つ葉のデザイン)の“再解釈”により既存モデルの端正な顔立ちよりも新型の印象はアグレッシブ。既存モデルのメッシュで構成されたそれは、新型では盾型グリルがやや大きく、凹凸のあるスリット模様が採り入れられていた。アルファの象徴的なグリルデザインにこだわる方にとっては、オシャレで凝っていて響きそうな気がする。エアインテークはダミー部分の範囲が多いけれど、既存のものよりガバッと開けられたように見え、それがサイドへと巻き込むように拡がりダイナミックさが強調されている。

もう一点、初見から目を引いたのが新デザインのホイールだ。ディスク部分が大きくくり抜かれた3つの円で構成された大胆なデザインのおかげもあってサイズ以上にタイヤ&ホイールが新しいトナーレのスポーティ感を高める。カラーバリエーションは“ロッソブレラ”、“ヴェルデモンツァ”の新色も追加された。ちなみにアルファロメオの場合、スポーティな印象が強まるほど色気も増すように思えるのは私だけだろうか。

実はデザインの改良には、近年ますます規制が強化される安全性に対応する必要もあった。すでにトナーレには最新のレベル2のADAS技術を装備し、360度カメラや国によってはセミオートパーキングなども選択できる。それに、そもそもの話に立ち返ると、トナーレの正確なハンドリングは百利あって一害なし。その気にもなれば俊敏で刺激的なドライブも可能なトナーレのドライバビリティは、正確な操縦性と安定性を持っているからこそ。日常ではその正確さは扱いやすさ=安全な運転のしやすさに繋がる。
さらに今回の改良には、歩行者保護への対策をより考慮したデザインが採り入れられている。ボディ前面のサイド部分に万が一歩行者が当たった際の対策をとる必要があったのだ。ボディ前端を上からみるとトナーレのフロントサイドは思っていたよりも角度がついており、これにより理想的なタッチポイントが確保されている。そのためにボディサイドに向かってエアインテークの上下の長さを出すことで、歩行者の理想的なタッチポイントを設けることができたのだ。結果的にはそれがボディのメリハリを生み、よりダイナミックでアグレッシブな印象に繋がっていた。
デザインと走行性能の関係については、
「新型のフロント部分、冷却のためのクーリングキャパシティ(開口部)の増加はわずかですが、同時にエアロダイナミクス(面の造形部)も増えています。バンパーサイドから後方へと流れる空気の乱流を抑え、きれいな流れをデザインできました」とメソネロ=ロマノス氏。

インテリアはすでにハイブリッドモデル導入のタイミングで採用されたデジタルクラスターメーターやロータリーセレクター、グラフィックデザインを施されたアンビエントライトなどもリファインされている。
トナーレの車内でプロダクト部門のアレサンドロ・コルニャティ氏と話をしていたなかでユーザー重視の開発&デザインの話題が印象に残る。

アレサンドロ・コルニャティ氏
「スポーティでエモーショナルなイメージのあるアルファ ロメオですが、このセグメントではファミリーや毎日、クルマで移動をする人たちの快適性を重視しています」。
デザインのエモーションを優先するイメージのあるアルファロメオの”機能美”の進化がますます進んでいる。最新のADASを搭載し安全と快適を両立。さらにインテリアはデジタル化が進んでも乗員の快適な環境を保つエアコンなどは直感操作ができるようセンターディスプレイの下に配置されている。他にも例えばトナーレの5色のアンビエントライト。「他ブランドでは20色とかそれ以上を備えるクルマもあるけれど、私たちはクリアな5色です」と、微妙な色や数の多さにこだわるよりも、活用のしやすさと、車内をどのように魅せるかにこだわりが向いていた。デザイン性の高いインテリアに悩ましい数の配色は不要なのだ。
コンパクトSUVのデザインは快適さに対する設計思想から話はボディサイズにまで話はひろがった。グローバルモデルであるトナーレだが、ヨーロッパでもとりわけイタリアの家のガレージは小さいのだとか。ところが同セグメントのモデルたちのボディはどんどんと大きくなる傾向にあることについて、
「室内空間のデザインは快適で扱いやすいく、一方でボディサイズは既存のガレージにもフィットする大きさを保っています。それにボディが大きくなれば重くなり、扱いやすさやスポーティなハンドリングも損なわれていくもの。トナーレは正しい選択をしたい人たちの期待を裏切らない、エブリデー&ファミリーカーです。それは単なるSUVではありません。アルファ ロメオのSUVです」とコルニャティ氏。
イタリアと日本のカーライフの感覚の距離がグッと縮まるような気がした。

イタリア車、とりわけアルファ ロメオのお二人のお話。今回、ロジカルなのに感性にしみじみ染みこむようなお話は読後感ならぬ会話後感の心地良さが耳の奥に残るような時間だった。冒頭のメソネロ=ロマノス氏のミッション、ブランドバリューとエンジニアリングの向上、ビューティネスの追求はコンプリートされているのではないかしら。
今回、トリノでの試乗はかなわなかったが、日本にやって来た際にはデザインの美しさと走りの洗練ぶりを確認するのが楽しみでしかない。
| Text: | 飯田裕子 |
| Photo: | Stellantis |