red-dot-for-new-article2026.5.29
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3月17日に東京ポートシティ竹芝ポートホールで開催された、「NEW ALFA ROMEO TONALE JAPAN PREMIER」におけるライヴパフォーマンスで、会場を大いに沸かせてくださったFPM 田中知之さん。

田中さんは世界的な音楽プロデューサー、そして世界を股にかける国際的なDJとして広く知られる存在。音楽の世界では数多くのファンを長きに渡って刺激し続けているが、一個人に立ち返ると、実は若い頃からのクルマ好き。現在は住環境・仕事環境的になかなか乗ることができなくなった英国製のGTカーを長く所有しているが、ひと頃は田舎に引っ越して、ジュリア クーペを手に入れて、思う存分走らせたいと真剣に考えたこともあったという。

2-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

今回はアルファ ロメオに大きな好感をお持ちである田中さんに、ステランティス・ジャパンのイタリアンブランドのトップである黒川進一さんが対談するかたちでお話をうかがった。アルファ ロメオのクルマづくりのこと、FPMのサウンドづくりのこと、そして「音」そのものについて……などなど、お話が望外に広く深く、クルマ好きにも音楽好きにも興味深いものになったので、前編と後編の2回に分けてお伝えしていくことにする。

リミックス。

黒川 先日の「トナーレ ジャパン プレミア」では、ライヴパフォーマンスをありがとうございました。運営側ではありますが、楽しませていただきました。個人的には小躍りしたい気分でした(笑)。

田中 ありがとうございます(笑)。いいパーティでしたね。

3-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

「NEW ALFA ROMEO TONALE JAPAN PREMIER」でのパフォーマンス

黒川 アルファ ロメオというブランドに関わってから、いつか田中さんにお仕事をお願いしたいと思ってたんですよ。それは、僕が昔からFPMのファンだったこともあるんですけど、何よりアルファ ロメオのクルマづくり、特に今回のトナーレで見られるデザイン手法と田中さんの創作スタイルに共通項があるように感じてたからなんです。

田中 そうなんですか?

黒川 はい。例えば新しいトナーレは、絶対的なアイコンと言えるスクデットの横に本国のデザイナーたちが「アゾーレ(編集部註:ボタン穴)」と呼んでいる、フロントの盾型グリルの左右に刻まれた縦型のエアインテークがあります。あれは新しいところでは現行ジュリアのGTA/GTAm、少し前だと156の初期の頃、もっと遡っていくと1920〜30年代の8Cシリーズや6Cシリーズといったモデルたちに使われてた意匠なんです。アルファ ロメオのデザイナーは、ジュリア クーペやディスコヴォランテ、スパイダー デュエット、8Cコンペティツィオーネ、まだまだたくさんあるんですけど、そうしたかつての名車たちへのオマージュとして、それぞれの特徴的なデザインエッセンスを現代的にアレンジして採り入れてます。今回のトナーレは初期の頃からそういう傾向が強いんです。

4-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

大胆に進化した新型トナーレのフロントフェイスのデザイン。より立体感と存在感のある新たなスクデット。その両サイドにあるアゾーレがスポーティな印象を際立たせる。

5-1200x874 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

アルファ 156。それまでのデザインを再解釈し、スクデット脇のアゾーレをはじめとして、スタイリングに新たな方向性を示した。さらに進化させたFFプラットフォームと相まってブランドに大きな名声をもたらした一台。

田中 トナーレの3眼のヘッドランプは、ES30のSZから来てるんですよね。

黒川 やっぱり御存知ですね(笑)。トナーレの場合、特にデザイナーたちがアルファ ロメオ歴史博物館に通い詰めてスケッチを繰り返して、ビックリするくらいの数のエッセンスを持ち寄ったようなんですけど、それなのにちゃんとひとつのオリジナリティのあるスタイリングデザインが出来上がってる。そういうところがFPMのサウンドと共通してるな、って思うんです。

6-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】
7 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

個性的な3連ヘッドランプなど、当時の常識を覆すデザインから「Il Mostro」(イル・モストロ=怪物)と、呼ばれたアルファ ロメオ SZ。

田中 なるほど。過去の引用があって、それでいながらちゃんと現代のモノになってる、っていうことですか。それは間違いなくリミックス、ですね(笑)。

黒川 そうなんです(笑)。ずっとそう考えてました。

田中 過去のアーカイヴからそれぞれサンプリングして、新しく手を加えて最新のダンスミュージックにするっていうようなことがずっとFPMのコンセプトのいちばんの骨子の部分にあって、今でもそれをやってることが多いんですけど、そういう意味では完全なブランニューじゃなくて、過去へのオマージュがあったうえで新しい作品へと仕上げていくっていうのが僕の音楽のひとつの制作スタイルです。黒川さんがおっしゃったとおりで、まさにそういうことだと思いますね。

黒川 そこ、個人的にはいちばんうかがいたかったところ……っていうか、そうですよね? って確認したかったところなんです(笑)。ただ、音楽を作られるうえで音源の探し方だとか、こことそこは本来ぜんぜん違うのに、っていうところがちゃんと合わさってくるじゃないですか? それって……。

8-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

田中 もちろんトリートメントもするし、合わせるための加工もいろいろやってます。それってクルマで言うなら、デザイン上にふたつの相反するものを、ともすれば引用しちゃうってことにもなるわけですよね。そういうのをマッチングさせるのって、音楽でも結構大変だったりするんですよ。これは音楽もそうだしクルマもたぶんそうだと思うんですけど、何でも持ってくればいいってわけじゃないし、何でも合わせればいいってもんでもない。そんなことしたら破綻しちゃいますよ(笑)。そうならないように、1曲の音源の中でいろいろなトリートメントを細かく細かく重ねていく。そういう作業が絶対に必要。ものすごく重要なんです。アルファ ロメオのデザインチームも、歴史から引用してきたいろいろなデザインのエッセンスを、トリートメントしたり加工したりしたはずです。しかも、それだけじゃなくてクルマとしての機能もちゃんと成立させなきゃならない。それってめちゃくちゃ大変な作業だったんじゃないかと思いますね。

黒川 3連のヘッドランプはイメージが1980 年代にデザインされたSZと共通してますが、機能の面では最新のフルLEDマトリクスになってるし、空力性能に有効な伝統的なコーダトロンカだけじゃなくて、チムニー効果を生み出すバンパー両サイドのスリットのように「今」に通じる革新的な技術も織り込まれてます。そういう部分でも過去と最新がうまく混在してるんですよね。

田中 僕らの世界にも似たようなことがあって、過去はこういうふうに音を出してたというもので、例えば古いチューブアンプ。その音の歪みは、昔はノイズだったのかもしれないけど、今となってはそれが味に感じられる部分もあるし、その味を上手く利用して最新の技術を駆使して作った音楽もあるんですよ。ちょっとオカルトチックな話なんですけど、僕らがよくやるのが古い音源のレコードとかを徹底的に聴いて、イタコっていうか(笑)、当時の作曲者だったりミュージシャンだったりの気持ちになるっていうこと。1回、自分に憑依させるというか。もちろんそれは思い込みなんですよ(笑)。そうやって音楽を聴くことで、過去へのオマージュを本人の気持ちでやる。イタコ作曲法って呼んでます(笑)。

9-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

黒川 田中さんのリミックスで大好きな楽曲のひとつがEarth, Wind & Fireの「September FPM Beautiful Latin Mix」なんですけど、あれなんかはどうやって作ったんですか?

田中 あれはもうむちゃくちゃなリミックスですけどね、本来なら(笑)。あれは元の曲のメロディだけを頭の中で抜き出して、権利関係的に誰にも怒られないラテンの楽曲があって合体させてみたら、これはもう何も足さなくても成立するな、と。いわゆるマッシュアップっていう手法で、それに現代的なダンスミュージックのリズムを乗っけた、という感じです。あれはあっという間にできちゃったんですよ(笑)。

黒川 そうなんですか?

田中 大胆と言えば大胆でしたよね。本来は合うものじゃないから。例えて言うなら……何だろう? 段付きとディスコヴォランテを合わせましょう、いや、そんなの絶対合わないでしょ。っていうようなノリをやってみたら、あれ? 意外とピッタリ合いました、みたいな感じで。そういう本来はあり得ない合わせ技が実は会う、みたいなことを何となく思い浮かべるのが趣味……って言うのはおかしいんですけど、いつもそんなことばっかり考えてるんですよ。そんな中で成功した、ひとつの事例ですね。……あっ、トナーレのスタイリングデザインもそのまま同じような事例でしたね(笑)。

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強烈なまでのスタイリングは、徹底した空力性能への追求から生み出された。その流麗なフォルムでディスコ ヴォランテ(空飛ぶ円盤)として知られているアルファ ロメオ1900 C52

11-1200x745 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

ジョルジェット・ジウジアーロがデザインした傑作、ジュリア スプリントGTは ノーズパネルに段差があることで国内では「段付き」の愛称で親しまれてきた。 写真はレース向けモデルのジュリア スプリント GTA。

黒川 それじゃ、パーティでもかけていただきましたけど、James Brownの「Sex Machine」は……?

田中 あれは日本発のリミックス企画でしたが、ちゃんと予算をいただいて、ストリングスのセクションを呼びまして。そうやって新しく作った正規のリミックストラックなのにブート(=bootleg=海賊版)と思ってる人が結構いるんですよ。いやいや、クルマで言うなら、街のクルマ屋が作った改造車みたいに思われてるけど、アルファ ロメオ公認ですから! アルファ ロメオがザガートに頼んで作った、みたいな感じですから! って言っておきたいです(笑)。

音のポテンシャルを自然に再現。

黒川 今日は田中さんにも新しいトナーレに乗っていただいたわけですけど、お話が音楽からの流れなので、最初にオーディオについてうかがいたいと思います。試乗していただいたトナーレの上級モデル、ヴェローチェというグレードには、14のスピーカーと465Wのアンプを持つharman kardonのプレミアムオーディオシステムが標準で備わってます。試していただいたと思うんですけど、印象はいかがでしたか?

12-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

田中 いや、ビックリしました。これまでに数百万円のシステムを組んだクルマとかいろいろなオーディオシステムを聴いてきてて、もちろん自動車メーカーが装備してるのもたくさん聴いてきてるんですけど、このharman kardonはすごくいいです。すごく好き。操作も簡単だし、とってもバランスがいいんです。何より音のポテンシャルがあるサウンドをちゃんと再現できるし、といって過剰に脚色してるわけじゃなく、自然な感じに再現してるんです。

黒川 なるほど。

田中 今の現代的な音楽って、超低音が入ってることが多いんですね。僕らはサブベースって呼んでるんですけど、人間が耳で聞き取れるギリギリっていうぐらいの低音で、それがちゃんと制御された状態で入ってるんですよ。それも含め、完全なアコースティックも含め、いろいろな音源で視聴してみたんですけど、例えば超低音もすごく綺麗なんですよ。しかもそれがピーキーじゃなく、角がなくてまろやかだから気持ちいいんです。僕らもそれを意識して音を作るんですよ。触ったら刺さっちゃうようなトゲをひとつひとつ抜いていって、その後に丹念にサンドペーパーかけて、最後はぴかぴかになって顔が写るぐらい磨く、みたいに。そういうのが最近の音作りで、ものすごく面倒でめちゃめちゃ手間もかかるんですけど、僕は好きでやってるんですね。そういう音を変な演出なしにキッチリと再現してくれるんです。車載のオーディオって無理に変なところにブーストかけて、そういうのを嫌なレベルまで上げちゃってたりしがちなんですね。でも、今回のharman kardonにはそういうところがぜんぜんなかったんですよ。すごく素直に、超低音とかも心地いい感じの音で出してくれる。

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黒川 化学調味料じゃなくて素材の味を出してくれる、っていう感じですね。

田中 そうですね。それに、音の解像度もものすごく高いんですよ。最近はレコーディングの技術がだいぶ上がってるので、音源の解像度もかなり高くできるようになってるんですけど、そこもしっかり再現してくれます。遠くの音が当たり前のように遠くから聞こえる。距離感だけじゃなくて、3次元というか、立体感があるんです。僕たちは音に奥行きを作ったり、位相を動かしたりとか、疑似ではあるんですけどレコーディングのときにやることができるんですよ。そういうものにもちゃんと追従して、気持ちよく聴かせてくれるんですよね。

黒川 音のツブがちゃんと聞こえる、っていう感じですか?

14jpg-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【前編】

田中 もちろんツブは立ってちゃんと聞こえるんですけど、ツブ立ちしてるだけだったらダメで、カンフル剤的な極端なイコライジングをすればツブは立つんですけど、それってツブも立ってるけど角も立った音になっちゃうんです。辛さだけが立った美味しくない料理みたいなものなんですよ。このharman kardonは、辛さはあるのに美味しさが勝ってるような味つけなので、だからものすごく好印象なんですよ。

黒川 僕は普段、ダンスミュージック系も聴くんですけど、もともと50年代のジャズ好きなんで、アコースティックの聞こえ方が気になりますね。

田中 すごく綺麗でした。とっても気持ちよかったです。音がすごく伸びやかで。僕は自宅ではそれこそ真空管で、モノラルのレコードのオリジナル盤しか聴かないんですよ。完全なノンデジタル、ですね。

黒川 それってとっても興味深いですね。

田中 自分の耳に合うんですよ。もちろん自分のスタジオには最新の機材があって毎日それを使ってるから、そっちの素晴らしさもよくわかってるんですけどね。まぁ例えて言うなら、1960年代のアルファロメオの4気筒のサウンドが最高っていうのと、トナーレのような最新技術が注がれてるハイブリッドって本当に素晴らしいっていうのに、とてもよく似てるかもしれませんね(笑)。

*以下、後編に続きます。

 

FPM 田中知之さんがおすすめするプレイリスト

田中さんからの選曲のコメント:
「トナーレに搭載されたharman kardonで是非プレイしたい高音質にして心地良い音源を集めました。
温かみを持ちながらも、最新の音響設計を感じる楽曲群。」

※プレイリストの再生には、Spotifyアカウントへのログインが必要です。 アカウントをお持ちでない方は、無料登録のうえお楽しみいただけます。

田中知之 (FPM)
Tomoyuki Tanaka (FPM)

DJ / 音楽プロデューサー / 選曲家として国内外で活躍。
FPM名義で8枚のオリジナルアルバムをリリース。多数のアーティストへの楽曲提供・プロデュースの他、リミキサーとしては、布袋寅泰、東京スカパラダイスオーケストラ、UNICORN、サカナクション、Fatboy Slim、James Brown、Earth, Wind & Fire, IUなど、100曲以上の作品を手掛けている。TVCM音楽、全米映画、海外ドラマ、演劇、TVアニメ等の映像作品への楽曲提供も多数。

DJとしては、国内の有名フェスは元より、米国のコーチェラ・フェスティバルなど海外の有名フェスへの出演経験もある。豊富な音楽知識とセンスに裏打ちされたプレイスタイルで、企業やブランドのパーティでのDJなど、クラブのみならず各方面で絶大な信頼を得ている。

その他、各種商業施設や店舗の音楽ディレクションも手掛け、東京2020オリンピック開閉会式、パラリンピック開会式では音楽監督を務めた。2022年度より洗足学園音楽大学”音楽・音響デザインコース”の客員教授に就任。2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™ Tokyo Pool のオープニングセレモニーでは、全編の音楽を制作、DJとして出演も果たした。

http://www.fpmnet.com/

Text: 嶋田智之
Photo: 望月勇輝(weekend.)

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