red-dot-for-new-article2026.6.26
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中心にあるのは常に“人”なんだと思います。

2-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【後編】

黒川 ここまででも充分に濃いお話をいただいて、どれが本題かわからなくなってきちゃいました(笑)けど、本題です。新型トナーレ、実際にドライブしていただいて、いかがでしたか?

田中 ひとことで言うなら、やっぱりわかってるよなぁ、っていう感じですね。クルマ好きの気持ちっていうのを、メーカーとしてよくわかってクルマを作ってる。そんなふうに感じましたね。

黒川 どんなところからそう感じられたんでしょう?

3-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【後編】

田中 いろいろあるんですけど……そうですねぇ、最初にブレーキペダルを踏んだとき、踏みはじめの感触が優しかったんですね。でも、もっと踏んでいくとギュッとしっかりブレーキが効く。ステアリングもそうだし、アクセルペダルもそうで、最初は優しいのにそこから先に行くとしっかり力を発揮してくれる。だからスッと馴染めるし、走らせやすいんです。でも、もちろんそれだけじゃなくて、例えば走行モードをダイナミックに切り換えると、その途端にエンジンのサウンドは勇ましくなるし、トルクの出方も変わって加速に勢いがつくし、ステアリングの手ごたえも強くなるし、クルマ全体が活き活きとしてくる。ちょっとビックリするくらいクルマがハッキリと変わって、元気よく走りたい気持ちを刺激してくるんですよね。加速ひとつが気持ちいいし、交差点ひとつ曲がるのが楽しい。そういう瞬間に、ああ、アルファ ロメオだな、って強く感じられる。そういうのが嬉しいっていう僕たちの気持ちを、開発してる人たちはわかってるんですよね。アルファ ロメオらしさがちゃんと楽しめる余地を作ってくれてるんですよ。

黒川 今日は試していただけないんですけど、ジュニアというもうひとまわり小さなモデルがあって、それもそうなんです。同じステランティスの中の他のブランドと基本構造は共通なはずなのに、アルファ ロメオだけ味つけが飛び抜けて違うんです。数値の上では何もアナウンスはされてないんですけど、細かいところのチューニングに相当こだわったんだろうな、って思います。

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ジュニア イブリダ

田中 優しいんだけど、飼い慣らされてる感じがないんですよね。ちょっとしたクセもあったりして。

黒川 アルファ ロメオって、操縦してる人としっかり対話ができるクルマだと思うんです。対話の仕方ってクルマによって様々なんでしょうけど、アルファ ロメオの場合はクルマそのものに確固たる意志があるんで、ある程度ドライバーから歩み寄らないと上手くそこの会話が成り立たないことがある。そんな側面もある一方でその会話が成立した時には、ものすごく気持ちいいんですけど。

田中 最近のクルマは、クルマの方から人に歩み寄ってて、それがいいっていう人もいる。大半の人はそうなんでしょうけど。スーパーカーなんかも、昔はクルマに合わせてあげないとまっすぐ走るのも難しかったりしたのに、今はすごく快適で乗りやすくなってます。それが進化っていうもので、それぞれのメーカー、それぞれのクルマごとの考え方が表れる部分なんでしょうけど、アルファ ロメオの場合は何かそういう意志みたいなものが残ってるんだなって、確かに感じますね。なのに普通に走る分にはちゃんと乗りやすく、しっかり現代的にアップデートされてる。そういうところのバランスって、すごく難しいと思うんですよ。僕らも例えば古い曲をリミックスするときに、どれだけオリジナルの雰囲気を残すかとか昔っぽさを残すかとか、悩むことがあるんです。現代っぽすぎても面白くないから、最終的なところでもう一度昔っぽさを戻そうとか。そういうことを常にやっていて、アウトプットする前にものすごく考えるんですよ。

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黒川 そうでしょうね。お察しします。現代のクラブミュージックを聴いてて、昔のものを知ってるから、あれ? なるほどな、って解釈できることがありますもんね。

田中 結局、音楽が良くなる瞬間ってそういうことなんですよ。例えば、最近だったらデジタルとかAIでやっちゃうんですけど、人間っぽいグルーヴのヨレって、昔は手作業で動かしてたから生まれたわけですよ。マシーンで叩いちゃうと一定すぎて何てことないんだけど、人間が叩いたように微妙なヨレを出すと途端にグルーブが生まれて踊りやすくなる。そういうことを僕らは工夫のひとつとしてやってるんですよね。どこもかしこも綺麗にまとめるんじゃなくて、あえて人間っぽさ、粗っぽさみたいなものを残すことが味を作り出して、グルーブを作り出すっていうことなんです。クルマ作りにおいて僕たちが考えてるようなことをやってるのがアルファ ロメオで、黒川さんが僕に共通項を見出してくださったっていうのは、ものすごく光栄な見解だと思います。

黒川 そういう人間っぽい感覚みたいなものを、アルファ ロメオは大切にしてますからね。

田中 僕も結局のところはそれしかない(笑)。自分が何を作りたいかっていうのを捨ててしまったら、それはブランドでも何でもない。僕も自分でFPMって名前でやってる以上は、自分が何か疑問や違和感を感じたら、それをちゃんと払拭するまでこだわり抜いて作業する。そういう気持ち、意志が絶対必要だと思うんです。

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黒川 すごく大変なことをしてらっしゃるんですね。

田中 めんどくさいですよ(笑)。効率も悪い。今はAIで簡単に、それもかなりのクオリティで音楽が作れちゃう時代ですからね。だから僕らはAIにできないことを大切にしてるし、追求してます。人が人のために作るものですから、AIには絶対に負けっこないっていう自信もあります。もちろん作業の中でAIを有効的に使うことも、僕らは当たり前にやってますよ。だから、最新の技術というか、技術の進歩みたいなものをいい具合にちゃんとしたバランスで採り入れるっていうのがとても難しいっていうことにも気づいてるんです。最新のエレメントでまとめるのって、実はわりと簡単なんですよ。クルマにも、そういうブランドやモデルがあるじゃないですか。でも、そういうクルマからは情緒が感じられない。だから僕らは惹かれないわけでしょ。アルファ ロメオの価値っていうのは、人のような意志が感じられたり、情緒深かったり、そういうところにあって、それを心で理解してる人が自分の意志で選んで乗っていらっしゃる。そういう人が世界中にたくさんいて、だから揺るぎないブランドであり続けてる。そういうことだって僕は思ってます。音作りもそうだし、クルマ作りもきっとそうなんでしょうけど、どんなに技術が進歩しても時代が変わっても、中心にあるのは常に“人”なんだと思いますね。

黒川 おっしゃるとおりだと思います。だからなのか、アルファ ロメオって乗るたびにすごく“人”を感じるんですよ。クルマ作りに関わった人たちの意志が、そのままクルマの意志になってるかのように。

田中 本当にそうですね。めちゃめちゃ人間っぽいですよ。感情が入ってるみたいに。でも、そこがいいんです。

黒川 おっしゃるとおり、間違いなく感情が入ってますよね。とても人間的。

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田中 その流れで言うなら、僕は人間的な音楽しか絶対にやりたくないんですよ。何であっても人間っぽさが残ってるものに、やっぱり魅力を感じるので。アルファ ロメオは金属とか機械とかでできてるのに、強くそれが感じられる。すごいな、って思いますね。

黒川 そういう意味では、クルマだけど多くの人に官能的と表現されてることもすごいな、って感じますね。僕たちも時々コピーなんかに「官能的」って使いますけど、それって僕たちメーカー側が率先して言いはじめたものじゃなくて、ファンの人たちの声を逆に使わせてもらってるようなものなんです。

田中 さっき“やっぱりわかってるよなぁ”って言った理由のもうひとつが、実はそこなんですよ。アルファ ロメオって、デザインにしても乗ったときのフィーリングにしても、どこか官能的なんですよね。すべてのクルマに、色気みたいなものがある。

黒川 間違いなくありますね。

田中 使い古された言葉かもしれないけど、男からすると悪女とつきあうみたいなもので、それってある意味、男にとっての究極的な憧れみたいなもんじゃないですか(笑)。アルファ ロメオのクルマ作りに関わってる人たちって、間違いなく官能性だとか色気だとか、強く意識してますよね。そうじゃないと説明がつかないです。

黒川 田中さんも音楽を作るときに、そういうことを意識されたりするんですか?

田中 自分に色気があるかどうかはともかくとして、何かそういうものが音楽に埋め込まれてるっていうのに、強く憧れますね。やっぱり人間の根源的なエネルギーの源だと思うので。でも、音楽っていうのは芸術だから、そういう情緒的なものを込めるのもまだやりやすいんですけど、それをいわゆる工業製品で表現するっていうのは本当に大変なことだと思ってるし、それを延々と続けてるのもすごいことだと思う。それを見た人や乗った人のほとんどが感じられるっていうのは、もっとすごいことですよね。出掛けようとキーを持った瞬間から甘い気持ちになるっていう人もいるくらいですから。シラフでそんなふうに夢見心地にさせてくれるものって、ほかにないですよね。

アルファ ロメオに憑依されるんですよ(笑)。

黒川 そういうところにも関連してるんですけど、僕たちが最近意識してるのは、アルファロメオ=アンチ・コモディティ、っていうことなんです。多くの人が合理的な理由だけで選ぶような、そういうブランドじゃない、という意味で。アルファ ロメオって、ちゃんと自分に向き合い、自分の感性で選んでくださる人たちのためのブランドだと思ってます。音楽もそうだと思うしクルマもそうなんですけど、そういう選び方をしたモノやコトって自然と没入できるというか、どんどん入っていけるじゃないですか。よくウェルビーイングっていう言葉を聞きますけど、好きな世界に入っていくと没入の中で「無」になり気持ちがポジティブになっていきますよね。そういう意味でアルファ ロメオに乗るということってウェルビーイングなんじゃないか? なんて思うんです。

8-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【後編】

田中 なるほど。面白いですね。ウェルビーイングみたいな言葉が違和感なくアルファ ロメオのブランドを表現するひとつの要素になってることが、すごく面白い。でも、確かにそうですね。同意します。実は音楽的な成長の過程にも同じようなことがあって、最初はアンダーグラウンド感とか音楽的な違和感みたいなものを強く主張しがちなんですね。僕らもそうだった。でも、時間の経過や社会との関わりの中で、魅力というか持ち味を決して薄めることなく、ちゃんと様々な人たちの暮らしや人生に無理なく入っていけることを目指すようになるんです。コモディティというと難しくなっちゃうけれど、そんなものは目指したくない。といって、ただマニアックなだけでもダメ。ちゃんとその時々の人々や社会にフィットするものでないと生き残っていけないし、誰にも認めてもらえなかったらただの自己満足じゃないですか。そうやってウェルビーイングな方向に近づいていくんですよ。

黒川 そうですよね、でもバランスもすごく重要ですよね?

田中 そうですね。僕も31年間ミュージシャンとしてやってきて、絶対になくしちゃいけないものっていうのを守りながら、新たに得てきたものとのバランスを常に考えながら生きてきての今、なんです。そういうことを忘れちゃいけないし、忘れて迎合だけしちゃったら“あいつは牙を抜かれた”みたいに言われる。牙を抜かれて飼い慣らされてコンビニエントな存在になるって言うのも生きるためのひとつの正しい方法なのかもしれないけど、僕はどうしてもそういうのができなくて(笑)。いつも考えてるのは、初心に立ち戻ること。それと、最終のアウトプットのときに今は自分に何が求められてるのかをもう1回考えること。それでちょっと綺麗にしすぎたと感じたら、こだわりであったりダーティな部分だったり荒々しい気持ちだったり、そういうものをこういうカタチで残したら今の僕なんじゃないかな? みたいに、すごく一生懸命考えるんです。アルファ ロメオのデザインチームとか開発チームも、きっと同じようなことを考えてるんじゃないかな、なんて僭越ながら思いますね。

黒川 きっとそうだと思います。自分たちのDNAっていうのを昔からずっと大切にしてることからも、わかりますよね。

田中 牙も抜かれてないし、飼い慣らされてもいないし(笑)。

黒川 まったくです(笑)。

9-1200x800 国際的に活躍する音楽プロデューサー、FPM田中知之さん。その音楽の根幹には意外にもアルファ ロメオと通底するものがあった。【後編】

田中 そういうことが感じられるブランドってどんどん少なくなってきてる気がして。僕はそういう精神が結構好きなんですよ。アルファ ロメオのデザイナーとか開発陣には、それに世界中のファンには、まぁかなり失礼な言い方ではあるんですけど、中二病みたいな人が多いんじゃないかって感じてるんですよ。僕自身も中二病ですけど(笑)。いや、僕は中二病みたいな自己肯定力やはっきりしたアイデンティティを持ってるヤツって強い、と思ってるんです。そこから来る強いこだわりだとか熱量だとかが、ものすごく重要で、それがアルファ ロメオの強みだし、それがアルファ ロメオの魅力を支えてる。その精神的な部分がクルマ作りに関わってる人とファンたちの根底に流れてる、ある意味では共通認識みたいなものになってると思うんです。つまり、クルマ好きがアルファ ロメオに求めるもの、望むものというのが、作り手とファンの間でシンクロしてるんですね。

黒川 中二病いいですね、僕もそうです(笑)。アルファ ロメオのデザイナーやエンジニア達もきっとそうですよ。たとえばスタイリングを例にとっても、ちょっと前まで別のブランドを担当してたデザイナーがアルファ ロメオを手掛けることになるケースってあるんですね。そして、世代が切り替わることもある。でも、どんなに人が変わっても、出来上がってくるクルマはすべて、ちゃんとアルファ ロメオなんですよね。表現する方法というか、方向性というか、目指してるところが変わらないんですよ。それは、きっと長い時間をかけて培われてきた精神性みたいなものが受け継がれていってるからなんだと思います。

田中 アルファ ロメオに憑依されるんですよ(笑)。絶対に失っちゃいけないものを、だから失わないでいられる。そういうところが素敵だなって感じますね。

黒川 何だかブランドとしても個人的にも伺いたいことがあってお越しいただいたんですけど、まったく予想してなかったぐらい深いお話になっちゃいました(笑)。願ったり叶ったり、どころじゃなかったですね。

田中 僕もアルファ ロメオに乗りたいっていう気持ちがずっとくすぶったままだったから、こうして御縁をいただいて触れてしまったことで、今、そこがだいぶ沸々としちゃってます。アルファ ロメオって、罪なブランドですよね(笑)。

前編を読む。

 

FPM 田中知之さんがおすすめするプレイリスト

田中さんからの選曲のコメント:
「トナーレに搭載されたharman kardonで是非プレイしたい高音質にして心地良い音源を集めました。
温かみを持ちながらも、最新の音響設計を感じる楽曲群。」

※プレイリストの再生には、Spotifyアカウントへのログインが必要です。 アカウントをお持ちでない方は、無料登録のうえお楽しみいただけます。

田中知之 (FPM)
Tomoyuki Tanaka (FPM)

DJ / 音楽プロデューサー / 選曲家として国内外で活躍。
FPM名義で8枚のオリジナルアルバムをリリース。多数のアーティストへの楽曲提供・プロデュースの他、リミキサーとしては、布袋寅泰、東京スカパラダイスオーケストラ、UNICORN、サカナクション、Fatboy Slim、James Brown、Earth, Wind & Fire, IUなど、100曲以上の作品を手掛けている。TVCM音楽、全米映画、海外ドラマ、演劇、TVアニメ等の映像作品への楽曲提供も多数。

DJとしては、国内の有名フェスは元より、米国のコーチェラ・フェスティバルなど海外の有名フェスへの出演経験もある。豊富な音楽知識とセンスに裏打ちされたプレイスタイルで、企業やブランドのパーティでのDJなど、クラブのみならず各方面で絶大な信頼を得ている。

その他、各種商業施設や店舗の音楽ディレクションも手掛け、東京2020オリンピック開閉会式、パラリンピック開会式では音楽監督を務めた。2022年度より洗足学園音楽大学”音楽・音響デザインコース”の客員教授に就任。2026 WORLD BASEBALL CLASSIC™ Tokyo Pool のオープニングセレモニーでは、全編の音楽を制作、DJとして出演も果たした。

http://www.fpmnet.com/

Text: 嶋田智之
Photo: 望月勇輝(weekend.)

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