2021.10.12
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9月24日(金)から27日(月)にかけて、ラ フェスタ ミッレミリア2021が行われた。昨年はコロナ禍により中止となったので、2年ぶりの開催である。当然というべきか、参加者たちは待ちに待ったという感じでスタート地点に集合。「久しぶり!」「元気だった?」と声を掛け合う姿が見受けられた。そんな初日のスタート会場と、同日ゴール地点からレポートする。

参加者の熱い思いを受けスタートとゴール地点を変更し開催

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ミッレミリア”、イタリア語で1000マイルという意味のこのクラシックカーイベント。その起源は1927年に初開催されたイタリアの公道レースにある。ミラノから東へ80kmほど行ったブレシアという古都をスタートし、ローマまで南下。そして再びブレシアに戻って来る1000マイル、1600kmのレースだった。第二次世界大戦中の休止を除いてほぼ毎年開催され、1928年には『6C 1500SS(スーペル スポルト)』が優勝し、以降3年連続でその地位をキープするなど、アルファ ロメオはミッレミリアのレース史上、燦然と輝くメーカーとしての地位を築いているのだ。

そんなミッレミリアは1977年にクラシックカーラリーとしてイタリアで復活。日本においても『ラ フェスタ ミッレミリア』として1997年から開催されるようになり、いまでは日本を代表するクラシックカーイベントのひとつとして知られている。

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昨年は残念ながら中止の憂き目を見たラ フェスタ ミッレミリア。2021年も開催が危ぶまれたが、主催者の努力と参加者の熱い思いを受け無事に行われた。例年通り、東京原宿をスタートし、再びそこに戻ってくるルートを今年も検討していた。しかし、見学者が集まってしまうなど、どうしても感染対策に無理が生じてしまうことから、急遽スタート地点を同日の通過ポイントとしていた中町ポケットパーク(福島県西白河郡)に変更。同時に受け付けや車検(レギュレーションをきちんと満たしているかのチェックや検温など)は競技が行われる予定だった矢吹自動車教習所が選ばれた。2日目は福島や宮城、山形を周り、福島へ帰着。3日目は栃木を経由し千葉へ。そして最終日は茂原市の茂原ツインサーキットなどを経て、海ほたるへゴールするルートとなった。

今回のエントリー台数は75台。そのうちアルファ ロメオは7台。また、サポートカーとして現行のアルファ ロメオも同行した。

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▲サポートカー『Alfa Romeo GIULIA 2.9 V6 BI-TURBO QUADRIFOGLIO(アルファ ロメオ ジュリア クアドリフォリオ)』

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▲サポートカー『Alfa Romeo 4C Spider Italia(アルファ ロメオ 4C スパイダー イタリア)』

女性も楽しめるラ フェスタ ミッレミリア

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企画運営等を行っているフォルツァ代表取締役の増田晴男さんに今回の開催に関して聞いてみると、「昨年中止したので、とにかく開催して欲しいという参加者の声が多かったのです。中には『食事もホテルの各自の部屋でコンビニ弁当になってでもいいからやってほしい』ともいう声もありました」とエントラントからの開催に対しての思いが非常に強かったことを明かす。さらに、毎年お世話になっているホテルなども昨年キャンセルをしていることから、これ以上迷惑を掛けたくない。そこで、どうしたら開催できるか、様々な対応策を検討した結果、ルートから東京を外し、前述の通りスタートを福島県、ゴールは海ほたる(千葉県木更津市)にすることで開催にこぎつけた。

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▲フォルツァ代表取締役 増田晴男さん

増田さんは、「とにかくどうやったら開催できるかを考えました。イベントはどんなことがあっても臨機応変に対応できるようにしておかなければいけませんので、その考えに従っただけ」とコメントするが、その苦労は並大抵のことではなかっただろう。また、「最終的に250kmほど走行距離が短くなったぶん、内容が濃くなればと思っています。つまり短い分だけ楽しめるようにしました」と述べた。

もうひとつこのイベントで重要なこととして増田さんは、「ラ フェスタ ミッレミリアは女性が主役だと思っています。女性に喜んでもらえれば、また来年も参加してもらえるでしょう。従って、景色はもちろんのこと、食事にも気を使っています」とオーガナイザーとしてのこだわりを教えてくれた。

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▲車検場の矢吹自動車教習所ではレースの無事を祈念して祈祷が捧げられた

本国のミッレミリアにも出場する手練れも絶賛

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ここからは今回の参加者の皆さんにお話を伺ってみよう。まずは1969年式のアルファ ロメオ『1300GTジュニア』で参加した山下保彦さん・敦子さん。本国のミッレミリアにも参加し、ラ フェスタ ミッレミリアには13回ほど出場しているベテランだ。実は昨年のイタリア本国のミッレミリアに参加予定でクルマも送っていたのだが、コロナ禍により辞退。その後、ラ フェスタ ミッレミリアが開催できそうだったことから、1300GTジュニアでの参加を決めた。山下さんは戦前車からいわゆるスーパーカーまで様々なクルマをお持ちのエンスージアスト。大学生の時に先輩から譲ってもらった1750GTVを皮切りに、多くのアルファ ロメオを乗り継いできた。そんな山下さんのアルファ ロメオの印象は、「昔からの憧れです。初めて買った1750GTVもこの時代から既にディスクブレーキですし、ツインカム、5速ミッションなどを搭載していました。手に入れた1978年当時、そんな日本車はありませんでしたからね」と当時を振り返る。実際に乗ってみると、「フィーリングと音が魅力です。そして名前。“アルファ ロメオ”とか、“GTヴェローチェ”などその響きがいいでしょう」と笑う。実際にミッレミリアなどに出た時も、戦前の6C8Cを目のあたりにして、そのオーラと迫力、そして音にすごく興奮したそうだ。

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出場車である1300GTジュニアは、「エンジンと足周りのバランスがすごく良くて、乗っていてとても楽しいですね。自分が乗って楽しいクルマが一番です。ジュリア系のモデルは、これまで1750GTV1600GTジュニアなどにも乗りましたが、この1300ccのエンジンは素晴らしいです。ワインディングロードでは“俺はプロか!”というぐらいひらひらと走らせることが出来るのです」と絶賛だ。

最後に今回の意気込みを伺ってみると、「久々の出場なので、出来たら完走したいですね。そして良い順位になれば」と山下さん。奥様の敦子さんも、「きょうはお天気にも恵まれていますし、4日間、調子良く最後まで走ることができれば良いですね。ラ フェスタ ミッレミリアは、何回出ても競技が難しいのでプレッシャーがかかります。でも景色も楽しみたいです」とコメントしてくれた。

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感染対策をすることが来年に向けての布石に

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次に、1959年式のアルファ ロメオ『ジュリエッタ スプリント ヴェローチェ』でご参加の鳥塚啓明さん・吉澤武さんコンビ。2019年は奥さまと参加だった鳥塚さん。奥様は隔年での参加とのことで今年は吉澤さんの番だそう。「クルマの調子はほぼ完璧で、キャブレターとエアクリーナーをオリジナルに戻したことで、かなり印象も変わり、安定したエンジンに仕上がっています」と調子は良さそうだ。鳥塚さんはジュリエッタについて、「エンジンも気持ち良いですし、クルマもしっかりしているので走っていてとても気持ちが良いですね。ちょうど良いパワーとハンドリングも魅力です。4000から5000回転まで回して良い音を楽しみながらバランスよく走らせることが出来ます」と語る。

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鳥塚さんに今回の意気込みを聞いてみると、「(中止となった)咋年のぶんも楽しもうと思っています。コロナ禍の中で色々と気を遣うことが必要ではありますが、実際に参加できたこと自体がとても嬉しいです。主催者の賢明な判断でいまの状況下でも開催していただけたこと自体がとても嬉しいので、それに応えられるように我々もしっかりと感染対策はしなければいけません。そうすることで来年以降も開催できるでしょうし、今年はその布石ということでしっかりやっていきたいですね」とコメント。ナビの吉澤さんは、「前回はリタイアしてしまったので、今年は完走したいですね」とのことだった。

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アルファ ロメオは自動車文化そのもの

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今回出場したアルファ ロメオの中で最も古い1929年式の『6C 1750SS』。佐藤健太さん・海斗さんペアで、3年ぶりのエントリーだ。佐藤さんたちはこのイベントについて、「予防対策をしっかりととりながら、リラックスして景色を楽しみたいですね」という。「最近はなかなか出歩きにくいので、日本らしさを堪能したいです。このイベントは移動している間に色々な日本を感じることができますので、まさに日本の良いところを再発見できたらいいなと思っています」とコメント。そして、「いずれ落ち着いた時に、この時はこうだったね、こうやって集まることが出来て良かったね、といえるような時間にしたいですね。ただなんとなく過ごすのではなく、ポジティブにその時間と向き合いたいという思いで出場しました」とのこと。

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お二人にとってアルファ ロメオとは、「自動車文化そのもの。イタリアという国が生んだ自動車文化の代表的なメーカーのひとつです。この1929年の6Cも、最新のモデルにも同じモチーフのエンブレムをつけているのがアルファ ロメオです。そこには80年以上の時の流れがありますが、同じDNAが宿っているのです。ですから、どちらのアルファ ロメオを見ても親近感がありますし、オーナー同士も友達みたいな感情が沸きます」と語ってくれた。なお、最終結果で佐藤さんペアは3位入賞を果たした。

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今年は天国!

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▲写真提供:内田千鶴子

初日は100kmほど走り、裏磐梯レイクリゾートがゴールだった。夕方になると続々と参加者が到着。途中雨に降られたりはしたものの、出場したアルファ ロメオは全車とも無事にゴールしたようだ。その中に2019年に初参加した塚本光輝さん・田中義章さんペアの1960年式、『ジュリエッタ スパイダー』を見つけたので、きょうの感想を聞いてみた。「2年前は台風で、しかも初参加でしたので、そのときを思い返すと何もかもが天国です。競技もうまくいきました」ととても嬉しそう。クルマも、前回は少々エンジンの調子が良くなかったそうだが、今回は絶好調で、「ほかのイベントにも出るなどで経験も積めましたし、だいぶ精神的な余裕もできました」と、かなり楽しんでいる様子だ。

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塚本さんは、「わたせせいぞうさんのイラストで赤いスパイダーを見て憧れていました。たまたま3年前に別のイベントでアルファ ロメオのコ・ドライバーで参加して、自分もアルファ ロメオを買おうと決めたのです。そのタイミングでこのクルマと縁があり、運命を感じてすぐに買いました。普段は現行のジュリア ヴェローチェに乗っていますので、アルファ+アルファの生活ですね。かなりアルファ ロメオ熱はかなり高いと思いますよ」と日常からアルファ ロメオと密に接しているようだ。また、「建築関係の仕事をやっている関係で、毎年イタリアのミラノサローネに行っていますので、どうしてもイタリアのデザインが良くなってしまいます。デザインが美しくないものは認められない性分なんですが、その点でもアルファ ロメオはデザインも素晴らしいし、エンジンも良いので言うことなしですね」と疲れも見せずににこやかに語っていただいた。

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▲初日ゴールの裏磐梯レイクリゾートに到着したジュリア スパイダー
写真提供:内田俊一

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▲初日にゴール、裏磐梯レイクリゾートに無事到着した参加者。その証明のスタンプを押してもらう。
写真提供:内田千鶴子

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▲このように、ルートをきちんとたどったかを確認するため、途中に設けられたポイントでスタンプを押してもらう。
写真提供:内田千鶴子

ラ フェスタ ミッレミリアは27日(月)に無事、海ほたるで閉幕した。いずれの参加者もいまの状況を踏まえ、自分をはじめ周りにも、そして観客にも迷惑をかけないよう細心の注意を払いながら、本当に楽しそうに笑顔でクルマを走らせていたことが印象的だった。そういった思いや行動はこのイベントを永続的に開催させる原動力になるだろうし、多くの人々の心を動かす源になるに違いない。

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Text: 内田俊一(Shunichi Uchida)
Photo: 濱上英翔(Hisho Hamagami)

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