アルファ ロメオ創立110周年を記念して、Instagram投稿によるフォトコンテスト『LA MECCANICA DELLE EMOZIONI』を実施中。その審査員となる二名のフォトグラファー、小川義文氏と東 真子氏にインタビューし、写真家として心掛けていることやフォトコンテストへ参加される方に向けたメッセージをもらった。さらに後半では、すでにフォトコンテストにご応募いただいた方の作品の中からいくつか寸評も掲載。
アルファ ロメオへの愛情を注いだ写真を投稿していただくアルファ ロメオ110周年記念企画『Instagramフォトコンテスト LA MECCANICA DELLE EMOZIONI』。その審査員となる二名の写真家に、作品への期待を含めた4つの質問に答えていただいた。小川 義文(おがわ・よしふみ)氏は、国内外を問わず活躍中の自動車写真の第一人者。東 真子(あづま・まこ)氏は、クルマ・人物・ファッションに情熱を注ぐ新進気鋭のフォトグラファー。後半では、すでに投稿されている作品の寸評も掲載。写真とクルマに向き合う写真家の真摯なメッセージを受け取ってほしい。
小川 義文氏
「映画のワンシーンのように」
▲小川 義文氏
Q1:写真家を志したきっかけとは?
20代の後半頃にPR誌の編集長を務めていて、当時は有名な写真家に仕事を発注する側でした。その写真家たちがこちらの意図を汲めなかったのか、繰り返し再撮を依頼することになった。それなら自分で撮ったほうが確実で早いと思ったのがすべての始まりです。写真の技術があったわけでも、自分のカメラを持っていたわけでもないのに。何とも傲慢な話ですよね(笑)
ただ、写真家として生きていくには専門分野を持つべきと考えて、子供の頃から大好きだったクルマに特化しました。自動車専門フォトグラファーと認知されたのは、メインで撮らせてもらった1984年創刊の自動車専門誌『NAVI』のおかげです。同誌に掲載された僕の写真がクリエイターの目には新鮮に映ったようで、大手自動車メーカーのCMの仕事が来るようになりました。しかし、独学で写真家になったツケが巡ってきます。ある仕事で、今度はポスターなので通称シノゴと呼ばれる大判カメラでお願いしますと言われました。ところが僕はそんなカメラを使った経験がない。なので本番までの1か月半で必死にマスターしました。幸いにも仕事には恵まれましたが、技術の獲得には冷や汗をかきながら相当に頑張ったものです。
Q2:写真家としての心掛けは?
自動車写真で言えるのは、映画のワンシーンのように撮ること。クルマと同様に映画も大好きで、特に60年代から70年代中期までの洋画をたくさん見ました。それらの作品ではクルマが印象的に使われることが多かったんですね。要はクルマを単なる機械に留めず、クルマに人気(ひとけ)を添わせることでシーン全体に意味を持たせていた。そんな往年の名画のような写真を撮りたい気持ちは、昔も今も変わっていません。
▲Photo by 小川 義文
Q3:アルファ ロメオとの思い出および印象は?
一番の思い出は、156が発表された1997年以降10年に渡って、アルファ ロメオの仕事をさせてもらったことです。新車だけでなく、ティーポ33ストラダーレなど歴史的名車をイタリアまで行って撮影できたのは幸運でした。そしてまたアルファ ロメオは、被写体としての魅力に満ちています。伝統的にデザイナーの才能を導き出すのが得意なので、撮影ではそのデザイナーの主張を読み解く感性が求められます。アルファ ロメオに限っては、それが特別に難しい分だけおもしろい。どこまでも興味をそそられるクルマです。
▲Photo by 小川 義文
Q4:フォトコンテストに参加される方へ向けてメッセージをお願いします
僕の心掛けに同調してもらえるのであれば、アルファ ロメオがいる風景写真を見てみたいです。シーンの物語性を追求してみると、他にない作品が撮れるかもしれません。あるいは、オーナーだからこそ知っている自分のアルファ ロメオのもっとも美しい角度や部分をクローズアップするのもおもしろいでしょう。いずれにしても、投稿される皆さんの美意識とアルファ ロメオ愛を存分に見せてください。
▲Photo by 小川 義文
東 真子氏
「被写体に愛情を」
▲東 真子氏
Q1:写真家を志したきっかけとは?
幼少期から絵が好きで、特にお姫様を描くのに夢中になったのが、今となっては写真家になる素養だったかもしれません。写真に興味を持ったのは、大学時代にイベントコンパニオンのアルバイトをしたときでした。ファンの方が撮ってくださるんですけど、自分が仕上がりを想定してポージングしていた画と全く違うものが上がってきたときに、違和感を覚えたんです。そんなこんなで自分で撮るようになって、『CAPA』という写真専門誌の投稿コーナーに出したら、これが何と数カ月連続で採用。「才能あるんちゃう?」という勘違いを私に与えてくれました。
けれど写真家になろうと思ったときには就職が決まっていたんですね。日立製作所に入社し自動車部品のバイヤーを担当することになりました。でも、何か違う。そう感じ続けた9カ月後に退社。地元の大阪で写真関係の仕事を探して、あれは忘れもしない2009年1月12日に時給850円(当時)の子供写真館で働き始めたのがカメラマンとしての最初の仕事です。クルマを撮るようになったのは、私が写真家だと母が友人に喋ったのがきっかけです。クルマ好きの方を紹介され、その方がスーパーGT300クラスのチーム監督になり、「じゃ真子ちゃん、写真撮りに来て」と。クルマの撮り方もわからないまま、気付いたらオフィシャルカメラマンになっていました。
Q2:写真家としての心掛けは?
クルマに限らず被写体に対して愛情を持つことです。女性ならその人がいちばん美しく見えるポージングやライティングを徹底的に考えるのと同じように、クルマでもデザインした人の思いを汲み取って、たとえば繊細な女性の肌を再現するように撮ろうとします。逆に、愛情を持てない被写体は私には撮影できません。
▲Photo by 東 真子
Q3:アルファ ロメオとの思い出および印象は?
初めて撮ったのが『Stelvio(ステルヴィオ)』なので、アルファ ロメオとのお付き合いはまだ浅いのですが、SUVになってもエレガントさを表現できるのは「さすがイタリア!」と感心しました。ステルヴィオに関して言えば、アイラインが特徴的で、ちょっと角度を変えるだけで全体の表情まで変化するのが楽しかったです。
▲Photo by 東 真子
Q4:フォトコンテストに参加される方へ向けてメッセージをお願いします
すでに投稿作品のいくつかを見させていただき、あまりのレベルの高さに自分が審査員で大丈夫かと心配になっています。ですが、あえて個人的な希望を言わせてもらえれば、人を絡めた構図。しかも男性誌のグラビア風ではないスタイリッシュな作品に期待したいです。その写真の裏側にあるストーリーを想像しながら撮影してみてください。例えば“彼女がお出かけする朝”等。そうすれば、おのずとファッションやポージングを含めたクルマ像が浮かび上がってくると思います。
▲Photo by 東 真子
▲Photo by 東 真子
フォトコンテスト審査員二人による寸評
最後に、現在ご応募いただいている方の中から、小川氏と東氏それぞれが作品を選定し寸評した。
小川氏の選定写真
Taka 様
「ボディ全体を写さなくても気になった部分に近づいて撮影するクローズアップ。エンブレムの美しさを描写しただけでもアルファの魅力を表現することができます。さらに水滴を利用してシズル感を演出しているのも写真を魅力的に見せるポイントになっています。雨中を疾走するアルファが思い浮かびます」
@taka_toku
Yu Shoji 様
「クルマの撮影で重要なのは、写真の構図を考える上で画面全体のバランスを整えること。フロントホイールを構図の中心とし、全体のフォルムを美しく再現していますね。スッキリした背景と青基調のアンダートーン、水面に映った逆像が写真の魅力を増幅しています。画面全体をうまく構成することができましたね」
@shooooozi
rsuti 様
「4Cをローアングルから望遠レンズで狙う。手前の路面と 背景がぼけて、画面全体がより印象的にとらえられています。日没間際の繊細光でフォルムを美しく現出させ、4Cの特徴でもあるリアとフロントのボリュームの対比も力強く表現できていますね。まるでプロがレクチャーするスポーツカー撮影のテクニックですね。」
@rsuti
NORIモノ倶楽部 様
「フロントデザインにミトの可愛らしくスポーティなキラクターが集約されています。それを見事に一枚の写真に収めています。背景の直線路とパームツリー、広い空が画面全体をスッキリ気持ちよく見せる構成になっています。柔らかい光がミト全体を包み細部までを美しく描写していますね。ミト愛溢れる作品です」
Kazumasa Honda 様
「カラー写真をモノクロに変換しボディをカラーに戻して、 主役が引き立つドラマチックに仕上げる方法ですね。オーナー自慢のクローバーとサイドストライプもアクセントになっています。あえて構図を斜めにすることで動きを演出する効果も出ています。サイドからの捉え方がミトをよりシャープなスタイリングに感じさせています」
東氏の選定写真
nao 様
「青空の広がりと白のボティの対比が、爽やかなお写真ですね。広角レンズの特性を生かして、お写真の下にモデルを寄せたのはお見事!脚がスラリと長く見えますね。更に一工夫。例えば、左方向に骨盤をねじり左肩を後ろに引くと、自然と右足の膝が中に入り、ヒップの丸みがでますし、ウエストは横からのアングルになり、メリハリが出ます☆」
山田拓史 様
「ビショーネちゃんをキュッっと大事に抱きしめる手がとってもかわいいですね。せっかくのかわいいお顔がビショーネちゃんと左手で隠れてしまっているので、もう少しカメラ位置を工夫してみてくださいね。また、レディの太ももが大きく見えてしまっているので、こんな時はトリミングをするか、上からのアングルがオススメです♪」
小川 義文(おがわ・よしふみ)
自動車写真の第一人者として、伝説の自動車雑誌「NAVI」にも携わってきた小川氏。光を巧みに操りながら、究極なまでに自動車の美しさを追求してきたその多くの作品の数々は、特に自動車好きを魅了せずにはいられない。
東 真子(あづま・まこ)
アートとして表現するファッションフォトを中心としながらも、人物、自動車と得意な作品も幅広い。特に自動車は学生時代、自身もジムカーナやダートトライアルで活躍するなど思い入れが深く、小川氏との作品共演なども発表している。
ホームページ:http://azmaco.jp
Text: | 田村十七男 |