2022.1.13
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アルファ ロメオが新たな進化を遂げつつある。多国籍自動車ブランドが集まるグローバル企業、ステランティスの一員として、ビショーネ(大蛇)のエンブレムを掲げるイタリアンブランドは今後どのような道を進むのか。2021年12月、日本とイタリアを繋いで開かれたオンラインQ&Aで、アルファ ロメオCEO、ジャン=フィリップ・アンパラト氏が語った未来への展望を報告する。

CEO・アンパラト氏が発起人となり実現したQ&A

1 アルファ ロメオCEOジャン=フィリップ・アンパラト氏が語る、アルファ ロメオの今後の戦略と未来▲アルファ ロメオCEO ジャン=フィリップ・アンパラト氏

2021年12月上旬、約30名の日本のメディア関係者やジャーナリストを前にして、多方面にわたる様々な質問に一つひとつ丁寧に答えてくれたアンパラト氏。このラウンドテーブルは、アンパラト氏が発起人となり実現したもので、アンパラト氏によれば、日本のマーケットは自動車に対する知識や見識が高く、世界の中でもベンチマークとなる市場であるとのこと。ゆえに日本との交流を積極的に図っていきたいと、今回のラウンドテーブル開催の意図を述べた。それではさっそくQ&Aの模様をお届けしていこう。

5年以内のEV化の実現を目指して

まず、多くのメディアから関心が寄せられたのは、ステランティスグループ内におけるアルファ ロメオの立ち位置とEV化について。アンパラト氏は今後10年間の具体的な戦略について話してくれた。

190610_AR_Tonale_03 アルファ ロメオCEOジャン=フィリップ・アンパラト氏が語る、アルファ ロメオの今後の戦略と未来▲Photo:アルファ ロメオ初のPHEV車・トナーレのコンセプトモデル

Q. 昨今の急速なEV(電気自動車)化の流れを受け、グループ内ではブランドの戦略の見直しが行われていることと思いますが、今後ステランティスの中でアルファ ロメオはどのような立ち位置となるのでしょうか? また昨年7月にアルファ ロメオは2024年以降、EV化に注力するとの発表がありましたが、その計画には、BEV(バッテリー電気自動車)以外にハイブリッドやプラグインハイブリッドも含まれるのでしょうか?

ジャン-フィリップ・アンパラト氏(以下アンパラト氏):我々はステランティスのCEO、カルロス・タバレス氏と数カ月にわたり協議し、ブランド戦略の精査・検証を行ってきました。私はアルファ ロメオが大好きな人間のひとりとして、アルファ ロメオはステランティスグループにおいてプレミアムブランドの役割を担う存在であってほしいと思っています。ブランド戦略については、市場で勝ち残っていくためには、数十年先まで見据えた長期的ビジョンを持つ必要があると考えています。特に10年後にブランドがどうなっているか。5年先のレベルでは投資まで含めた具体的な計画が固まっている必要があります。それらについてタバレス氏と十分な話し合いを持ちました。」

2 アルファ ロメオCEOジャン=フィリップ・アンパラト氏が語る、アルファ ロメオの今後の戦略と未来

「その計画の中身ですが、2030年までにアルファ ロメオは毎年1台のニューモデルの発表、もしくは大きなプロダクトイベントを実施していきます。例えば2022年は、6月にブランド初となるプラグインハイブリッド車(PHEV)『トナーレ(Tonale)』のローンチを行います。その生産開始は3月を予定しており、イタリアでのローンチ後、半年以内にすべての国への投入を予定しています。また2024年には、ブランド初のバッテリーEV(BEV)をローンチします。そして2025年以降は、完全なBEVのみを投入し、2027年以降に販売するのはBEVのみとなります。5年以内に完全なEV化を果たすという我々の計画は、おそらく世界を見渡しても、もっとも早い変革となるでしょう。そしてEV化の実現のため、完全に新しいEV専用アーキテクチャーを展開していきます。アルファ ロメオは今後、電動化という新たな世界に進んでいきますが、もちろん過去のブランドの歴史に敬意を払い、最新技術を取り入れながらそれを実現していきます。

Q.アンパラト氏は着任早々、市販化を控えた『トナーレ』のローンチに待ったをかけ、市販化を延長したそうですが、何が問題だったのでしょうか?

190610_AR_Tonale_05 アルファ ロメオCEOジャン=フィリップ・アンパラト氏が語る、アルファ ロメオの今後の戦略と未来▲トナーレのコンセプトモデル

アンパラト氏:それは製品検証の初期段階のときでした。よくできた車でしたので設計は変えたくありませんでしたが、電動化の度合いが十分でないと考え、ローンチを12週間先延ばしにする決断をしたのです。その後、指摘した問題が適切に改善され、計画通り2022年にローンチできることになりました。

高性能モデルやBセグメントの開発にも意欲

5年以内のEV化を明言したアンパラト氏だが、参加者からは従来のモデルと照らし合わせた具体的な製品計画を問う質問が寄せられた。アンパラト氏はそうした将来の計画についても明確に答えてくれた。

Q. ジュリア GTAとGTAmが発売されましたが、今後もこのような高性能モデルは、例えばトナーレやその他のモデルにも設定されていくのでしょうか?

Giulia-GTAm-Etna-Red-3 アルファ ロメオCEOジャン=フィリップ・アンパラト氏が語る、アルファ ロメオの今後の戦略と未来▲Photo:ジュリア GTAm

アンパラト氏:その答えは、我々の意図としてはYesです。それはアイコニックな存在として、ワンオフ(オーダーメイド)車両がベースとなるかもしれません。我々は一般的な製品を安定的に供給していく一方で、奇想天外な提案も行っていきたいと思っています。常に情熱を持ち続けないといけませんからね。

Q. MiToのようなBセグメント(スモールカークラス)のコンパクトモデルも今後登場しますか?

090908_AR_MiToMultiAir_19 アルファ ロメオCEOジャン=フィリップ・アンパラト氏が語る、アルファ ロメオの今後の戦略と未来▲Photo:MiTo(欧州仕様車)

アンパラト氏:アルファ ロメオがBセグメントに関心を持っているかという点で言えば、Yesです。それは日本も含め、多くのお客さまがBセグメントの商品を心待ちにしているからです。我々はBセグメント車の開発に意欲を持っていますし、投資も行っていきます。そしてそれは必ずや美しいクルマに仕上がるでしょう。

Q. プラットフォーム戦略について、アルファ ロメオはこれまでFRベースのジョルジオ プラットフォームを採用していたと思いますが、ステランティスではPSA由来のプラットフォームも使えるようになると思います。今後グループ内でプラットフォームが共有される計画はありますか?

アンパラト氏:アルファ ロメオのプラットフォーム戦略はシンプルです。今後ステランティスグループのプラットフォームを採用していきます。グループとして小型車向けのものから中型車、大型車まで展開していきます。それらを採用することで、常にグループが持つ最新の技術やモジュールの展開が可能になります。グループ内で孤立した存在になってしまうと、使える技術は限られたものになってしまいます。新しいアーキテクチャーの設計の際にアルファ ロメオでの採用を前提に進めることで、我々の求める必要な性能やスペックを担保することが可能となり、結果として真のアルファ ロメオを完成させられると考えています。

台数よりもお客様との関係の質を大切にしていきたい

02 アルファ ロメオCEOジャン=フィリップ・アンパラト氏が語る、アルファ ロメオの今後の戦略と未来

アルファ ロメオが愛される理由のひとつは“味”の部分。EVとなる将来のアルファ ロメオは、どのような味をドライバーに提供してくれるのだろうか? 質問は核心へと迫っていく。

Q. アルファ ロメオをこれまで以上に日本に浸透させていくための具体的な施策を教えていただけますでしょうか。

アンパラト氏:日本には、アルファ ロメオ専売ディーラーが全国に42拠点あり、豊富な経験とスキルを持つネットワークが構築されています。我々がやらなければならないことは、そのネットワークをサポートすることです。欧州を始め世界と同じプロダクトを日本でも展開していきます。そして私たちが大切にしていくのは、販売台数ではなく、お客さまとの関係の質です。いたずらに台数を求めるのではなく、ブランドの価値を高めていくという方針でタバレス氏の合意も得ています。結果として台数は後から付いてくると見込んでいますが、あくまで優先するのは台数ではなく、カスタマージャーニー(商品の認知から検討、購入、利用について時系列で捉えた考え方)であり、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)の質です。例えば、ショールームでスタッフがお客さまに時間を費やして丁寧に商品説明を行ったり、テストドライブの機会を持っていただいくという具合に、量よりも価値の増大を図っていきたいと考えています。

Q. アルファ ロメオは今後何を強みとして市場で戦っていくのでしょうか。

アンパラト氏:私からの答えは、ブランドの過去と最新技術の融合です。アレーゼにあるアルファ ロメオ歴史博物館にお越しいただければ感じていただけると思いますが、アルファ ロメオはブランドの歴史に重きを置いているブランドです。世界が刻々と変化を遂げていく中、アルフォロメオは過去と未来をつなぐ製品の開発に力を注ぎ、それを強みとしていきます。アルフォ ロメオは今後もドライバー中心のアプローチを続けていきます。それこそが我々のDNAだからです。今後は人工知能や様々な先端技術を用いて情報を得られるようになるでしょう。それらをドライビングに役立つインフォメーションとして、ドライバーに提供していきます。これによりドライバー中心のクルマ作りの思想が保たれると考えています。我々はiPadを備えたようなクルマを販売しているわけではありません。ドライバー中心のエクスペリエンスを提供しているのです。

150624_Alfa_Romeo_La-macchina-del-tempo_1 アルファ ロメオCEOジャン=フィリップ・アンパラト氏が語る、アルファ ロメオの今後の戦略と未来▲Photo:アルファ ロメオ 歴史博物館

約1時間のラウンドテーブルはあっという間に過ぎていった。あらゆる質問に一人で応じ、重要な質問にも躊躇することなく、即答してくれたアンパラト氏。その姿からはアルファ ロメオのビジョンに確固たる自信を持っているように感じられた。いま自動車ブランドは岐路に立たされている。電動化は避けられない課題となっているが、大切なことはその先にどのようにブランド価値を確保していくかだろう。その点について、アンパラト氏は「過去のブランドの歴史に敬意を払いながら、最新技術を駆使し、ドライバー中心の車作りを続けていく」と述べていた。いちアルファ ロメオファンとして、クルマを愛する者として、何よりも嬉しかったのはその回答だった。混沌とした状況の中、アルファ ロメオの進む道は明確に定まっているようである。

Text: 曽宮岳大

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