[Alfa Tribe インタビュー] 日本の音楽を再定義するエクスペリメンタル・ソウルバンド
「WONK」&トナーレのUnpredictableな出会い

2021.12.27
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2021年12月1日(水)、『ジュリア GTA/GTAm』の受注数が世界最多であった日本に向けて、アルファ ロメオ開発チームによるオンラインラウンドテーブルが開催された。そこで、プロダクト総責任者のダニエル・グッザファーメ氏と、ハイパフォーマンス車総責任者であるチーフエンジニアのドメニコ・バニャスコ氏によって語られた、GTA/GTAmの企画と開発、F1チームの関わり、そしてアルファ ロメオの今後の展望について紹介する。

日本のアルフィスタティのための特別なラウンドテーブル

これは芸術以外の何物でもない。アルファ ロメオ ジュリア GTA/GTAmについて知れば知るほど、そんな想いが胸に膨らんでいく。深く、そして熱い。情熱だけでなく知性を感じさせ、他の追従を許さない圧倒的な性能を誇る一方、ブランドの伝統を守ろうという忠誠心が滲み出ている。アルファ ロメオのクルマづくりの思想が色濃く反映された『GTA/GTAm』。この2台はアルファ ロメオらしさの縮図とも言えるのではないだろうか。そして、このクルマにシンパシーを感じて購入に踏み切ったオーナーの数が世界でもっとも多い国が日本であるという事実に、イタリアと日本をつなぐ縁の深さを感じるのである。

1 開発責任者が明かす。アルファ ロメオ史上最強のスペックを持つ、ジュリアGTA/GTAmの全貌

2021年12月1日(水)に、イタリアのGTA/GTAm開発チームが、オンラインで日本のメディア/ジャーナリストの質問に答えるラウンドテーブルが開催された。世界限定500台のうち日本からは世界最多の84台もの受注があったため、アルファ ロメオの開発チームと日伊の広報チームが一丸となり、日本のアルフィスティのために実施してくれたのだった。

GTAとは、グランツーリズモ・アレッジェリータ(Gran Turismo Allegerita)の頭文字を取ったもの。軽量化を表す『A』は、このクルマの出で立ちを物語るばかりでなく、アルフィスティにとって特別な意味を持つ。その起源は1965年のアムステルダム モーターショーで発表された『ジュリア GTA』に遡る。アルファ ロメオのレース活動を担っていたアウトデルタにより開発されたジュリア GTAは、数々のチューニングやパーツの材料置換により標準モデルより200kg以上も軽量化され、サーキットで無敵の強さを示した。その往年のジュリア GTAにインスピレーションを受けて登場したのが、現代のジュリア GTA/GTAmである。

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現代版ジュリア GTA/GTAmの開発には、F1 アルファ ロメオ レーシングの母体であるザウバー モータースポーツが関与し、テストにはF1ドライバーのキミ・ライコネンとアントニオ・ジョヴィナッツィも参加している。2名のドライバーが今シーズン限りでF1のフィールドを離れてしまったのは残念だが、同じメンバーが二度と集まることはない、そんな一期一会の出会いから生み出されたことも、ジュリア GTA/GTAmのストーリー性を深める重要な要素となるだろう。なお500台の限定車となるGTA/GTAmは発売から4ヵ月後の9月30日時点で本国にて完売が発表され、今後コレクターズカーになるのは間違いない。

ヘリテージを重んじる姿勢が貫かれた開発

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ラウンドテーブルでは、アルファ ロメオ GTA/GTAmの企画から開発、F1チームの関わり、そしてアルファ ロメオの今後の展望など様々な質問が飛び交い、それにアルファ ロメオ プロダクト総責任者のダニエル・グッザファーメ氏と、アルファ ロメオ ハイパフォーマンス車総責任者であるチーフエンジニアのドメニコ・バニャスコ氏が一つひとつ丁寧に応えてくれた。その中から興味深かった内容を抜粋してお伝えしていこう。なお既報の『カーグラフィック代表・加藤哲也が聞くGiulia GTA/GTAm開発秘話』と重複する部分は割愛する。

最初にアルファ ロメオGTA/GTAmの開発目標は何だったかという成り立ちに対する質問が寄せられた。グッザファーメ氏の回答は、「1965年に登場したジュリア GTAのコンセプトを忠実に再現すること」だった。コンセプトとは具体的には、第一に軽量化、そしてドライビングダイナミクス、エンジンならびに空力性能の向上だ。

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▲アルファ ロメオ プロダクト総責任者 ダニエル・グッザファーメ氏

ここで興味深いのは、機能や性能を向上させるメニューの内容を、過去のモデルを参照しながら丁寧に決めていること。バニャスコ氏によれば、開発チームはアレーゼのアルファ ロメオ歴史博物館に2日間通いつめ、1965年型ジュリア GTAのデザインならびに機能パーツを、きわめて細かいところまで検証したという。

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▲アルファ ロメオ ハイパフォーマンス車総責任者 ドメニコ・バニャスコ氏

アルファ ロメオに限らず、新たなモデルを開発する時に、過去のモデルにインスピレーションを得ることは珍しくない。しかしそれらの多くはデザインや装飾の類だ。ところがGTA/GTAmの開発では、性能を向上させる手段においても、ヘリテージを重んじようとする姿勢が貫かれているのだ。多くの自動車メーカーは自社の過去より、競合他社のスペックやラップタイムなどライバルの動向を見ることが多いのではないだろうか。

アルファ ロメオは元来、過去と現代のリンクを大切にしているブランドである。これは偉大な過去を持つからこそできる芸当といえるだろう。そのうえでライバルと比べても秀でた結果を残しているのが賞賛に値する。このクルマの場合では、ベースとしたジュリア クアドリフォリオ自体、2015年にニュルブルクリンクの北コースのラップタイムで当時の量産型4ドアセダン最速の座を獲得し、世界の頂点の座をほしいままにしたのだ。

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コンセプトを忠実に再現するためのアプローチ

GTA/GTAmの開発チームは、1965年型ジュリア GTAのコンセプトを忠実に再現するという開発の方向性を定めたあと、各要素の機能を突き詰めるために議論を重ねた。

そうした開発プロセスが現れた一例として、このクルマはセンターロック式のシングルナットホイールを採用している。量産型セダンで世界初となるセンターロック式ホイールの採用は、過去にインスピレーションを得ながら、それを現代の技術で甦らせた典型。1965年型のジュリア GTAでは、ハブキャップを排したカンパニョーロ製の専用ホイールを採用していた。そのエッセンスを現代の手法で再現するために開発チームが選んだソリューションが、ユニークな機能とデザイン性を融合したセンターロック式の採用なのだ。これはF1に参戦しているアルファ ロメオならではの発想であり、そこから生み出された専用の20インチ鍛造アルミホイールは、独特のロック機構を採用するだけでなく、往年のGTAのマルチホールデザインの面影が残るデザインとされた。

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ボディパネルの材料置換にも同様のことが言える。現代のGTA/GTAmは、フロントバンパー、フェンダー、リアホイールアーチ、リアディフューザーにカーボン素材を採用している。とりわけフロント部にその採用部位が多いのは、リアに比べてフロントの方が軽量化の実現が難しいためだという。こうした軽量化アプローチは1965年型のジュリア GTAに共通しており、当時のモデルはペラルマン25という軽量素材をボディパネルに使用していた。これはマグネシウムやマンガンを融合したアルミニウム合金素材で、当時の最先端の技術だった。この点においてもGTAのスピリットが現代に受け継がれていることがわかる。

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キミ・ライコネンが太鼓判を押す“走り”

さて、ラウンドテーブルで多くの参加者が興味を持っていたのが、ザウバー モータースポーツの関与についてだ。その具体的な関与について訊ねた質問への回答として、空力パーツ、特にフロントスプリッター、サイドフリック(カナード)、調整式リアウイング、そしてボディ下部のエアロフィンが挙げられた。これらの空力デバイスはザウバー モータースポーツの風洞実験で検証が行われ採用されたもの。4段階に角度調整が可能なリアウイングと、GTAmに採用される全長調整式(GTAは固定式)のフロントスプリッターについては、走るステージによりダウンフォースの量を変更できるものとされている。これは世界各地のサーキットを転戦し、ステージによりセッティングを使い分けるF1コンストラクターらしいアイデアと言えるだろう。

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ちなみに2020年秋にはキミ・ライコネンとアントニオ・ジョヴィナッツィがバロッコのテストコースを走らせ、採用した空力デバイスの効果とバランスの検証を行っている。その時、ライコネンは「高速域でのバランスが向上し、さらにステアリングの操舵感についてフロントの車高を下げたかのような効果が確認できた」とコメントしていた。そして「速いし、運転しやすく、反応も良い」と太鼓判を押していたのが印象的だった。

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バニャスコ氏によると、アルファ ロメオは1952年以降、バロッコのテストコースですべてのテストを実施しており、GTAとGTAmはいずれもクアドリフォリオに対してラップタイムの向上を確認したという。具体的には、GTAが-2.96秒、GTAmでは4.07秒も早くなっており、ナルドのコースでもそれぞれ3.48秒、4.70秒のタイム短縮を実現している。

もちろんこれは空力性能やシャシーだけでなく、エンジン性能の向上も関係している。ラウンドテーブルでは、エンジンのチューニング内容を具体的に教えて欲しいという質問が挙がったが、これに対してバニャスコ氏は「エンジンについてはチューニングという言い方はふさわしくないかもしれない」と返答。いわく、エンジン内部の数多くの部品を新設計しており、チューニングの域を超えた変更を施した。

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具体的には、コンロッドを新設計し、エンジンの冷却効果を高めるピストンオイルジェットを2つ追加したほか、オイルクーラーも新設。さらにターボチャージャーはより広い回転域で稼働するように変更されているほか、ECUマッピングの変更。加えて排気系にはアクラポヴィッチ製のチタンエキゾーストシステムを採用している。その結果、最高出力は540ps/6500rpm、最大トルク600Nm/2500rpmというアルファ ロメオ史上最強のスペックを達成した。

過去のスピリットを、現在、そして未来へ

先人たちが生み出した過去の名作にインスピレーションを受けつつ、最先端のテクノロジーを取り入れ、他を圧倒する絶対的な性能を実現したGTA/GTAm。過去のモデルからコンセプトを継承するという作業は、ともすれば開発の制約ともなりそうなものだが、ヘリテージを守りながらも常に歴代のモデルを超えていくアルファ ロメオの車づくりの姿勢、そしてそこから生み出される機能と美しさを備えたクルマはアートのようですらある。

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アルファ ロメオは今後、2025年までにすべてのモデルに電動モデルを設定し、EV化を推進していく戦略を打ち出している。これについて、参加者からは今後の高性能車の存続を心配するように今後の展望を問う質問が挙がったが、グッザファーメ氏は「GTA/GTAmのようなラインアップの頂点に立つモデルは、これからもかならずアルファ ロメオの中心的な役割を担っていく」と答えた。さらに「GTA/GTAmのような高性能モデルでは、電動化のメリットを生かせると考えている。そして今後もアルファ ロメオの高性能モデルは、ブランドが常に大切にしてきたスピリットを忠実に実現していくだろう」と述べた。

過去のスピリットを受け継ぎつつ、それを現在、そして未来へと繋いでいくアルファ ロメオ。今後もこのイタリアのプレミアムブランドからは、ヘリテージを継承しながら過去を超えるマシンが登場し続けるだろう。

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Text: 曽宮岳大
Photo: FCAジャパン/Stellantis

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