2020.10.15
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現役F1ドライバーとして最多出走記録を更新したキミ・ライコネン、現役唯一のイタリア人F1ドライバーであるアントニオ・ジョビナッツィ。2人のアルファ ロメオ・レーシングドライバーがレースへかける想い、そして今年のF1について訊いた。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開催スケジュールが大きく変更された2020年のF1。当初は3月にオーストラリアで開幕する予定だったが、これが大きく後ろ倒しになり、7月にオーストリアで開幕。遅れを取り戻すべく、修正版の開催カレンダーは欧州のサーキットが中心となり、3週連続開催はおろか、史上初めて同一サーキットでの2週連続開催が実現するなど、これまでに類を見ないシーズンとなっている。

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今年も強さを誇るのはメルセデス。それをレッドブル・ホンダが追うという展開。昨年まで優勝争いの一角に加わっていたフェラーリは、同チームの歴史上稀に見る大苦戦のシーズンを送っている。その結果、第11戦を終えたところで、メルセデス9勝、レッドブル1勝という成績である。

大波乱のイタリアで見せた、ライコネンの意地

そんな中、大番狂わせとなったのがイタリアGPである。アルファタウリ(昨年までのトロロッソ)のピエール・ガスリーが優勝、2位にはマクラーレンのカルロス・サインツJr.、3位にはレーシングポイントのランス・ストロールが入った。トップチームのマシンが1台も表彰台に上がらない、そんなレースとなったのだ。

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今季のアルファ ロメオ・レーシングは、苦戦を強いられるシーズンとなっている。ただこのイタリアGPでは意地を見せた。赤旗中断からのレース再開後、キミ・ライコネンは素晴らしいリスタートを決めて2番手にジャンプアップすると、サインツJr.やストロール、そして最強メルセデスのバルテリ・ボッタスらを抑えて見せたのだ。

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▲キミ・ライコネン

最終的にはライバルらに抜かれて順位を落とし、入賞とはならなかったものの、ライコネンの腕と意地を見せつけた1戦だったと言うことができるだろう。そして続くトスカーナGPでは9位に入り、シーズン最初のポイントを獲得した。

一方のジョビナッツィは、開幕戦オーストリアGPでいきなりの9位入賞。際先の良いシーズンスタートを切った。しかしその後はうまくいかないレースが続き、入賞を果たせずにいた。しかしつい先日、ドイツのニュルブルクリンクで行なわれたアイフェルGPでは、スタートでジャンプアップするとその後も好ペースを並べ、多くのマシンがリタイアしたレースを生き残って10位入賞を果たした。

結局このアイフェルGPを終えた段階で、アルファ ロメオのふたりは、ライコネンが9位入賞1回、ジョビナッツィが9位と10位1回ずつという成績。総獲得ポイントは5と、たしかに厳しいシーズンになっている。しかしライコネンは、レースを経る度に、チームとして前進できていると感じているようだ。

「チームとして考えた場合、思っていたほど満足できる状況ではないと思うが、どんどん良くなっている。この方向で進んでいくことができれば、うまくいけば安定してトップ10に入れるようになるだろう。すでに良い一歩を歩み出している」

★2020-09-24-19.51.44-1200x672 「競い合うだけが、人生じゃない」――ふたりのドライバーがレースへ挑む想い
▲オンラインインタビューの様子。(写真左)キミ・ライコネン(写真右)アントニオ・ジョビナッツィ

ライコネンはそう語っており、前進への手応えを感じているようだ。

「当初は、もっと良いはずだと期待していた。でも、少なくとも僕らは、正しい方向に進んでいる。残りのシーズンに向けて最善を尽くし、何を手にできるのかを確認するつもりだ」

ライコネンにとって“レース”そして“人生”とは?

2001年、四輪ではフォーミュラ・ルノーでのレース経験しかないという異例の状態でF1デビューを果たしたライコネンも、今やベテラン。現役最年長(40歳)となっただけでなく、ルーベンス・バリチェロの持つ最多出走記録を更新した。

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そのライコネンは昨年、F1を「趣味の様に楽しめている」と語っていた。今年はこれについて、どう考えているのだろうか?

「より良いポジションを争えれば良いとは思っている。誰だって良いポジションを走っている時の方が、楽しめるはずだ。

でも期待していたほど良いポジションではない時でも、良いレースを戦えていると思う。望んでいたほどの結果ではないとしても、イタリアでの2レースはとてもエキサイティングだった

レーサーとしては、レースをする時に前が誰で、後ろが誰なのか……それは関係ない。エキサイティングなレースになることが重要なんだ。とにかく肝心なのは、僕らがうまくやればみんなが満足してくれるということ、それはとても良いことだよ」

「人生というのは、少なくとも僕にとっては、レースだけではない」

かつては尖った印象を放っていたライコネン。しかし今では家庭を持ち、子供も生まれた。ほとんど笑うことなく”アイスマン”というニックネームをつけられた彼も、最近では笑顔を見せる頻度が格段に増えた……。

「レースには多くの時間を費やしている。でも人生には、それ以外のこともあるんだ。レースはある意味では僕らがやりたいことでもあるけど、仕事でもある。だからレースに多くの時間を費やすけど、一方で普通の生活がある……だからレースを楽しめるんだ。もちろん、楽しめないならやらないわけだからね。」

アルファ ロメオの一員としてF1を走るのは“誇り”

ライコネンは新型の『ステルヴィオ(Stelvio)』について、父親としてもとても使い勝手の良いクルマだと語る。

「前のステルヴィオも良かったけど、この新しいステルヴィオもいいね。エンターテイメント・システムやエンジンも変更されていて、確かに素晴らしい。それに僕には家族がいるから、子供たちや荷物を積んだりするのにも重宝する」

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▲『ステルヴィオ(Stelvio)

「馬力があるから、たしかにアクセルを踏めばスピードが出る。でも、基本的には日常で使いやすいクルマだと思う」

それについて答えたのは、ライコネンのチームメイトであるアントニオ・ジョビナッツィだ。ジョビナッツィは現役唯一のイタリア人F1ドライバー……母国を代表するブランド“アルファ ロメオ”に対して、強い思いを抱いているようだ。

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▲アントニオ・ジョビナッツィ

「アルファ ロメオは、F1にとって重要なブランドだ。だって、F1で一番最初に勝ったブランド(F1世界選手権最初のレースとなった1950年イギリスGPで勝利を収めたのは、アルファ ロメオのマシンを駆ったジュゼッペ・ファリーナなんだからね」

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そうジョビナッツィは語る。

「イタリア人の僕にとっては、イタリアを代表するブランドのひとつであり、今このブランドを代表する立場でいられることを、本当に誇りに思っている。歴史あるブランドなんだ。その一員であることを、本当に誇りに思うよ」

なおライコネンにとって最も印象に残っているアルファ ロメオは、155だという。

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▲155 TwinSpark

「僕にとって最初のアルファ ロメオについての記憶は、155ということになると思う。ドライブするのが、とても楽しかった。僕は古いクルマが好きなんだ。155よりももっと古いレーシングカーも、それは素晴らしかった。それをドライブした時は、本当に楽しむことができたんだ」

2020年のF1も、後半戦に入っている。この後はポルトガル、イモラと転戦し、トルコを経て、中東三連戦で閉幕となる。

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確かに今季、厳しい立場に置かれているアルファ ロメオ・レーシング。しかし、成績が上昇傾向にあるのは間違いのないところ。そして中団グループは大接近戦であり、“ベテラン”ライコネンの腕を持って、ライバル相手に一矢報いる……そんなレースを期待したいところだ。

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Text: 田中健一(motorsport.com日本版)
Photo: FCAジャパン株式会社

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