2021.3.26
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3月初旬、ステルヴィオの雪上試乗会が北海道・トマム周辺にて実施された。ステルヴィオは雪道でどのような真価を発揮したのか。自動車ジャーナリスト・山田弘樹氏によるスノードライブのインプレッションをお届けする。

ステルヴィオに乗車し、北海道の雪道へ

DSC5792 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

予想外の吹雪に驚きながらも、アクセルを踏む右足に、少しだけ力を入れてみる。するとステルヴィオはその4輪を確かな蹴り出しでデコボコとした路面に食い込ませ、らくらくと雪の登坂路を進んで行った。アクセルの追従性が抜群で、かつその出力特性がとっても穏やかだ。なるほどこれが、雪上における2.2ディーゼルターボのリニアリティか!

DSC5844 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

今回筆者は『Alfa Romeo STELVIO 2.2 TURBO DIESEL Q4 SPRINT(アルファ ロメオ ステルヴィオ 2.2 ターボ ディーゼル Q4 スプリント)』を、北海道はトマム周辺の雪上路で走らせて、そのスノードライブのインプレッションをすることとなった。
しかし実を言うとそこには、ちょっとだけ不安もあった。
ご存じステルヴィオは、スポーツカー顔負けのハンドリングを持つSUVだ。その要となるのは駆動方式で、トータルな制御は4輪駆動としながらも、そのベースはリアドライブ。そして必要に応じて、フロントにトルクをスプリットする仕組みになっているからだ。参考までに言うとそのステアリングのギア比も12:1と極めてクイックな設定であり、しなやかに鍛え上げられたサスペンションと共に、背の高いSUVボディを積極的に曲げて行く。
そんな切れ味鋭いハンドリングを知っていただけに、この吹雪を前にしてちょっと身構えていたのである。

DSC6002 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

それがどうだ。当のステルヴィオはそんな筆者の心配などまるで気にしないかのように、本場の雪道をいつも通りに走り抜くのだ。しっとりと肌触りのよいステアリングを回して行くと、ノーズを少し前のめりにさせながら、適度なロール量でスーッとカーブを曲がる。筆者の体はホールド性の高いシートにじわっと押しつけられて、手の平だけでなくまさに体全体で、路面の様子とステルヴィオの動きを感じ取ることができるのである。

DSC5997 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

アクセルを踏み込んだときにグーッと後輪から押し出される感覚は、むしろクルマの動きが鋭敏になる雪道の方が、ドライ路面よりも強いかもしれない。そして驚いたのは、その後輪の路面を捕らえる動きが、まったく破綻しないことであった。
1750rpmという極めて低い回転から470Nmの最大トルクを発揮し、3500rpmも回せば210psの最高出力を叩き出す2.2リッターディーゼルターボは、こちらの予想を超えて、従順にその性能を発揮する。アクセル開度に対するレスポンスはリニアながら、それがドライバーの意図を超えてトルクをまき散らすことは一切ない。それでいてアクセルを踏み込んで行けば、気持ち良く高回転までこれを回しきってくれる。

DSC4603 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

そこにはいくつかの制御が働いていると考えられる。
まず後輪がスリップする前にトラクションコントロールが働き、出力を絶妙に絞っているのだろう。それと同時にフロントにトルクが幾分かスプリットされ、ニュートラルなハンドリングが保たれているはずだ。
しかしその身のこなしは、こちらが拍子抜けするほどに自然である。カーブでいたずらにアクセルを大きく踏み込んでも、リアを大きく振り出すことはない。むしろ大きく出力を絞られてしまうのだが、しかしスロットルを丁寧にコントロールして行くと、ときにドライバーが気づかないほどの絶妙なアシストを用いて、雪道を走ってくれるのである。

頼もしさを感じる乗り味と力強さ

DSC5738 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

さらに嬉しいのは、カーブでアンダーステアが出ないこと。内輪ブレーキを用いたトルクベクタリングが働くことで、下り坂のロングカーブなど、普通なら緊張を強いられる場面で、安心してハンドルを切って行ける。
またディーゼルながらもオールアルミ製エンジンとしたことで、そのフロント重量配分がガソリン車と比べて+10kgに抑えられていることも、運転しやすさに効いている。

DSC5677 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

雪道でクルマが曲がらないと、実はこれがとても怖い。慣れていないとハンドルを沢山切って、さらに曲がりにくい状況を作り出してしまいがちなのだが、ステルヴィオだとこれが実に、リラックスして運転できてしまう。
こうなるとドライバーにもリズムが出てくる。その華麗な乗り味とディーゼルエンジンの力強さに、頼もしさすら感じて嬉しくなってくる。

ちなみにステルヴィオはトラクションコントロールをオフにはできないのだが、珍しく筆者はそれで良いと感じた。トラック(サーキット)を縦横無尽に走るのは、クアドリフォリオバッジを着けたグレードや、ジュリアたちの役目だろう。あくまでこのステルヴィオ 2.2 ターボ ディーゼル Q4 スプリントは、そのデザインやインテリアと同じ質感の高い走りで、ドライバーを楽しませてくれればいい。それが現代に生きるアルファ ロメオの流儀なのだと素直に受け入れることができた。

厳しい路面状況でも期待以上の柔軟性を発揮

DSC4463 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

さらに翌日筆者は、ガソリンモデルの『Alfa Romeo STELVIO 2.0 TURBO Q4 SPORT PACKAGE(アルファ ロメオ ステルヴィオ 2.0 ターボ Q4 スポーツパッケージ)』で、片道1時間半かけて帯広の街まで遠出してみた。
高速道路はアイスバーンの上にパウダースノーが敷き詰められるかなり厳しい路面状況であり、街中は雪道に慣れた地元のクルマたちでさえ慎重を期すほどの状況だったが、ここでもステルヴィオ スポーツパッケージは、期待以上の柔軟性を発揮してくれた。

DSC4905 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

スポーツパッケージとして鍛え上げられたサスペンションと、前後で拡大されたトレッドの組み合わせは、ときおりエッジーな動きを見せた。しかしフロントにダブルウィッシュボーン、リアにマルチリンク式サスペンションを有するそのハンドリングはその動きをグッと抑え込んでくれる。エンジンはディーゼル・ターボほど分厚い低速トルクを発揮しないものの、ガソリンエンジン特有の滑らかさと、十分以上に実用的な400Nmのトルクを持って、着実に北海道の大地を踏み出して行く。

DSC4851 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

なおかつDNAモードを『a:アドバンスト・エフィシェンシー』モードに入れることによってスロットルコントロールが穏やかになり、安心感が高まる。

DSC5699 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

またACC(アダプティブクルーズコントロール)をアクティブにすると、この厳しい環境でも前走者との間隔が適切に保たれ、車線中央をキープしてくれたのがとても頼もしかった。
もちろん、ステルヴィオ 2.0 ターボ Q4 スポーツパッケージの気持ちよさを満喫するなら、ドライ路面が一番のステージだ。残念ながら今回はそのターボエンジンが気持ち良く高回転まで吹け上がり、タイヤのグリップを満喫できるような状況はなかった。しかしスタッドレスタイヤを履いたその走りはいたって堅実であるとわかり、ガソリンモデルのステルヴィオにも、雪どけを楽しみに待てるだけの柔軟性が、きちんと備えられていると確認できた。

雪上で感じたジョルジオ・プラットフォームの真価

DSC4585 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

たとえば除雪もままならない雪道に分け入り、タフにこれを走り抜くような雪上性能が欲しいのであれば、JEEPのラングラーのようなヘビーデューティーがベストだ。
しかしこのステルヴィオが、もっぱらオンロードだけを得意とするSUVなのかといえば、決してそうではないことが今回の試乗でわかった。厳しい環境にも適応できる決め手となったのは、このステルヴィオが4WDだからというだけではない。むしろ後輪駆動をベースとして鍛え上げたシャシー性能がベースにあるからこそ、全ての制御がナチュラルにアシストできるのだ。
これこそがジョルジオ・プラットフォームの真価であり、その走りをまとめあげたテストドライバーたちの実力である。

DSC5974 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

今回登場したクルマAlfa Romeo STELVIO 2.0 TURBO Q4 SPORT PACKAGE(左) / Alfa Romeo STELVIO 2.2 TURBO DIESEL Q4 SPRINT(右)

DSC4483 雪上で体感した、ステルヴィオの質感の高い走り。モータージャーナリスト山田弘樹氏によるスノードライブインプレッション

【主要諸元】Alfa Romeo STELVIO 2.0 TURBO Q4 SPORT PACKAGE
全長:4,690mm/全幅:1,905mm/全高:1,680mm/乗車定員:5名/エンジン種類:直列4気筒 マルチエア 16バルブ インタークーラー付ツインスクロールターボ/総排気量:1,995cc/使用燃料:無鉛プレミアムガソリン/最高出力:206kW(280ps)/5,250rpm[ECE]/最大トルク:400N・m(40.8kg・m)/2,250rpm [ECE]/駆動方式:4輪駆動/全国メーカー希望小売価格¥7,200,000(消費税込)

【主要諸元】Alfa Romeo STELVIO 2.2 TURBO DIESEL Q4 SPRINT
全長:4,690mm/全幅:1,905mm/全高:1,680mm/乗車定員:5名/エンジン種類:直列4気筒インタークーラー付ターボ/総排気量:2,142cc/使用燃料:軽油/最高出力:154kW(210ps)/3,500rpm[ECE]/最大トルク:470N・m(47.9kg・m)/1,750rpm [ECE]/駆動方式:4輪駆動/全国メーカー希望小売価格¥5,890,000(消費税込)

Text: 山田 弘樹
Photo: 安井宏充(weekend.)

Profile

山田 弘樹(やまだ・こうき)

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。編集部在籍時代に参戦した「VW GTi CUP」からレース活動も始め、ツーリングカーでは「LOTUS CUP Japan」やスーパー耐久、フォーミュラでは「Formula SUZUKI隼」やスーパーFJに参戦。この経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆活動中。また、並行してスーパーGTなどのレースレポートや、イベントでのインストラクター活動も行っている。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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