2023.7.15
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113年にわたる華麗なるヘリテージを背負い、今なお進化を続けるスポーツサルーン「ジュリア」。これを生み出したアルファ ロメオの進化を長年にわたり見守ってきた株式会社カーグラフィック代表取締役の加藤哲也氏。加藤氏が最新型のジュリアで向かった先は、横浜。東京から湾岸線を走り、鶴見つばさ橋、ベイブリッジと続く2本の橋を越えれば、かつて加藤氏が居住地に選んだ山手はもう近い。クイックなステアリングを操る加藤氏に、ジュリアについて、そして当時、アルファ ロメオで走り回ったという横浜の街での「忘れられない体験」について訊いた。

モダナイズされたジュリア 最新モデルのデザイン

0715-kato_001 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

まずはジュリアのデザインについて。2015年6月24日にミラノでのローンチに立ち会って以来、その姿を何度も目にし、ステアリングを握ってきた加藤氏。先日発表されたばかりの最新モデルでは、フルLEDマトリクスヘッドライトやデジタルクラスターメーターが採用されている。

Q:最新モデルのデザインに関して、加藤さんが感じられている印象は?

「すごくハンサムになったと思います。僕は元々、ジュリアの造形が好きで、フロントにスクデット(盾)が鎮座し、端正な美とちょっとしたビジュアルインパクトが融合したデザインというのは、アルファ ロメオ・デザインの伝統だと思うんですよね。その後ラインアップにステルヴィオ、トナーレが加わって、最新モデルのトナーレでは、3眼のヘッドライトを採用してきた。そのブランドデザインの進化に応じてモダナイズを図った、というのが今回の意匠変更の背景にあると思うし、それがジュリアのデザインにも、いい方向に働いているんじゃないかなって思いますね」

0715-kato_002 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

Q:長年アルファ ロメオのデザインを見てきた加藤さんにとって、DNAの継承のようなものを感じますか?

「デザインの文脈が息づいていると感じますね。3眼のヘッドライトということで言えば、『ブレラ』もそうだし、『SZ』もそうかもしれないけれど、進化の中にも往年のモデルからヘリテージを受け継いでいる部分があって、そういうデザインのコンテクストっていうのはやっぱりブランドにとって重要なものだと思うんですね。特にヘッドライトというのは、要素技術の進化がデザインに反映されるところがあって、そういう意味では最新のテクノロジーとアルファ ロメオのデザインヘリテージがうまく噛み合ったスタイルだと感じます」

0715-kato_003 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

Q :全体のプロポーションはどうですか?

「いかにも走りの良さそうなデザインを、セダンのスタイルで実現したというところはすごいなと思いますね。置いてあるだけですごく彫刻的で、立体的な面構成をしているし、それも過剰にならないギリギリのところで実現しているなって。それはおそらくジョルジオ・プラットフォームを用いた本来のプロポーションがいいからできることであって、シンプルな中にも力強さが表現されている。ダイナミズムというアルファ ロメオの生命線が巧みに表現されたプロポーションだと思います」

0715-kato_004 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

0715-kato_005 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

Q:インテリアはどうですか?

「スタイリングを妥協せず、その上で大人4人が乗れる室内空間を確保したパッケージングが立派だと思いますよ。その上で今回メーター周りを変更し、インテリアもモダナイズしたっていうことだと思うんだけど、機能の良さは残されていると思います。インストルメントパネルは、回転計と速度計を2連に配置したオーセンティックなレイアウトを基本としていて、クルマ好きに喜ばれると思います。こういうところは自分達のファンに向けた良心という風にも受け取れますよね。このデジタルメーターは速度計だけデジタル表示ができるようになっているけど、経験上、回転計は丸形で、速度計は数字で表示されるっていうのが機能的に一番いいと思うんだけど、そうした表示が可能にところも、やはり乗り手の気持ちというか、ドライバーが何を求めるかを大事にしているのだと思いますね」

進化を続けてきたパフォーマンス

0715-kato_006 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

Q:エンジンについてはどうでしょう?

「アルファ ロメオのエンジンは時代ごとに変遷を遂げていて、過去には、ジュゼッペ・ブッソが手掛けた、通称“V6ブッソ”という名機があったし、“アルファ ロメオらしくない”と言われるエンジンを積んでいた時代もあった。今のエンジンは、実用トルクが厚く、非常に乗りやすいと思う。やっぱりその時代によって求められるものは違うし。そういう意味では現代のパワーユニットって、時代にマッチするパワートレーンだと思うんですよね。それに出来がいい8段ATが組み合わされ、十分な動力性能と瞬発力、それにクルージング能力が備わっていますからね」

0715-kato_007 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

「あとアルファ ロメオの名誉のために言っておきたいのは、どの時代のクルマも、ハンドリングは凄く良かった。開発陣全員が“アルファ ロメオかくあるべし” という信念を持っているんでしょうね。エンジンについても時代ごとに制約がある中で、彼らなりの最適解を出してきたと思うし、制約が薄いハンドリングについては、とことんこだわってくる。その上で、ハンドリングのバランスという意味では、同じジュリアでも面白さはクアドリフォリオが長けていると思うけど、現実的なところでは、シャシーとエンジンのバランスがすごく取れているのは今乗っているヴェローチェだと思います」

0715-kato_008 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

Q:アルファ ロメオは、常にドライバーを魅了する走りを備えているブランドだと思うんですけど、それを支えているのは何だと思いますか?

「個人的には、ブランドというのはマーケティングではなく、プロダクトが作るものだと思っています。ジュリアが生まれた時代っていうのは、前FCAの最高経営責任者を務めたセルジオ・マルキオンネの強い思いにより、アルファ ロメオのルネッサンスが実現し、秘密の精鋭開発部隊“スカンクワークス”が組まれ、ジュリアが作り上げられた。プロダクトアウトで誕生したクルマですよね」

Q:加藤さんは、ジュリアが発表された当時からずっと見てきているアルファ ロメオの良さというものは、今もそのまま残っていると?

「そのままというか、むしろ進化していると思います。特に乗り心地が良くなった。『カーグラフィック』では、登場してすぐのモデルを長期テスト用に購入したから、その当時の記憶が鮮明に残っているんだけれども、いま乗っているヴェローチェは、乗り心地が確実によくなっていますね。タイヤの違いもあるかもしれないけど、ダンパーにも手が入っていると思いますね。ただ、そうした進化で当たりは少し柔らかくなっているけど、本来の良さはスポイルされていない。そこはアルファ ロメオの開発チームは掴んだら離さないところが以前からあったと思います」

0715-kato_009 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

「昔“プロジェクト4”というものがあり、フィアット・クロマ、ランチア・テーマ、アルファ ロメオ164、あとサーブ9000。これら4モデルを同じプラットフォームを用いて開発するという企画でした。おそらくブランドをまたいで基本コンポーネンツを共用する最初の例だったと思います。これら4台を実際に乗り比べてみると、やっぱりアルファ ロメオは飛び抜けてスポーティだった。味付けの巧さ、ホットなフレーバーの入れ方みたいなのがアルファ ロメオは突き抜けていたんです。最近の例で言うと、やっぱりジュリア GTA/GTAmがすごかった。GTA/GTAmは、クアドリフォリオをさらにサーキット方向に振ったクルマかと思ったら、乗り心地も抜群に良かった。その上で、GTAとGTAmの差をちゃんとつけてくるところに感銘を受けましたね。そこにはドメニコ・バニャスコさんという、4Cや8Cコンペティツィオーネなども手がけた優秀なエンジニアがいて、このような優れたプロダクトを支えているんだなっていうことを実感しました。『カーグラフィック』で同クラスのサルーンの比較テストをやっても、ジュリアは最優秀モデルに何度も選ばれているんですよ。それだけプロダクトとしての完成度が高いってことだと思います」

加藤氏を魅了した街、横浜を走る

そんな話を伺っているうちに、車窓の向こう側に、横浜の街並みが見えてきた。都内からも気軽にドライブできるこのルートを、加藤氏はかつて通勤路として利用していたという。

0715-kato_010 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

0715-kato_011 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

Q:お住いに横浜を選んだのはどういう理由ですか?

「横浜ってちょっと異世界というかね。港町の風情はあるし、ちょっと泥臭いところもあるし。山手に住んで面白いと思ったのは、坂を降りると、元町の商店街があるし、そこから道を渡ると、中華街があります。通り1本隔てると、世界が変わる。未だにちょっとカオティックな匂いがするエリアがあったりね。一方で、綺麗な街という姿ももちろんあって、大桟橋から眺める風景はすごく美しい。橋を越えるごとに風景の匂いが変わっていくっていうかね。若い頃に通ったお店がまだ残っていたりとか」

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Q:それはどういうお店ですか?

「もう閉店してしまったけど、『リキシャルーム』というレストランバーとかね。横浜特有の文化があるんですよ。ザ・ゴールデン・カップスとか、彼らの奏でる音楽はすごくカッコよかったし、昔から住んでる自分たちの一世代上の団塊世代の真剣に遊ぶ、真剣に踊る、というね。そういう風土が面白かったんですよ。やっぱり横浜はカルチャーの発信地であったし、根底にはアンチ東京の精神があった。次第に東京の巨大なパワーに飲み込まれて行きつつも、それに反発していた。そういう気概に溢れているところも魅力に感じましたね」

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Q:その魅力をひと言で集約すると、どんな言葉がふさわしいですか?

「ローカル性、じゃないかな。綺麗な街という一面があり、場所によってはちょっと危ない匂いがするね。そういうエキゾチックさもある。都心から30分で足を踏み入れる面白さがあった。同じようなところは、アルファ ロメオにもあるでしょう。多分彼らは、八方美人なクルマではなく、自分たちのファンや、走ることを愛する人たちを魅了するクルマを作り続けている。イタリアらしさ、ミラノのパッション。アルファ ロメオにもそういうローカル性を感じますね」

0715-kato_014 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

Q:東京-横浜間を通勤されていた経験から、アルファ ロメオで走ってその楽しさが感じられるオススメのドライブルートを教えてください。

「定番でしょうけど、やはり首都高・湾岸線はなかなか面白い。浮遊感を感じられますしね。特に僕が好きなのは、羽田の手前の緩い左カーブを夜に抜ける時。右側に倉庫のような建物が見えて、その先の左コーナー。それからつばさ橋を越え、ベイブリッジを越えてからの景色も好きですね。東京-横浜間っていうのは、気軽にアルファ ロメオの魅力を味わうのに、ほどよい距離感だと思うんですよね」

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「自動車の魅力って、ドライビングの快楽というのも、もちろんあるんだけど、移動の快楽という側面もあると思うんです。離れた別の場所に、いつでも自分のペースで行けるっていう。通勤路のような決まった道を走るだけでも、快楽を味わえなくはないけれど、やっぱり、より濃密な時間を味わうためには、いつもと違う道を走るのがいいと思う。行き先に何か目的を求めるような旅を大切にし、移動の時間を楽しむ。それが横浜であってもいいし、湘南の海であってもいいし」

0715-kato_016 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

0715-kato_017 カーグラフィック・加藤哲也氏が語る 「アルファ ロメオで走った横浜と、その地で刻まれた忘れられない体験」

「自分の記憶を振り返ってみても、ここを走った時にあの曲聴いていたよなとか、あの娘と一緒だったよなとか、あいつらと一緒だったようなっていうのが、深く心に残っているじゃないですか。そういう経験というのは、構えなくても、自然に作られるものですよね。ちょっと感性を鋭敏にしておけば、それが“忘れられない体験”に繋がるんじゃないかなと思いますね。ましてアルファ ロメオは、運転している時に自身のセンサーを自然と鋭敏にしてくれるところがあるので、意識せずに走っているだけで楽しさが伝わってくる。ジュリアもそういうクルマだと思います」

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ジュリア製品サイトはこちら

Text: 曽宮岳大
Photo: 望月勇輝(Weekend.)

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