※当記事は『ENGINE Web』に掲載されている内容を一部改変して転載したものです。
最新モデルのトナーレにも通じる3連のフルLEDマトリクスヘッドライトが採用され、イメージを刷新したアルファ ロメオのスポーツSUV、ステルヴィオ。LEDデイタイム・ライトを得てより精悍さを増したステルヴィオに、かつてジュリエッタで全日本ラリーに参戦していたこともあるモータージャーナリストの竹岡圭さんが乗って、その魅力を語ってくれた。
デザイン性能を語れるアルファ ロメオ
「あぁ、やっぱり絵になるなぁ」と、自分のクルマなのにもかかわらず、なんとなくカメラを向けてしまう……。これ、アルファ ロメオのオーナーなら、100%やっていらっしゃることとお察しします。そして、そういうことをやっても許されるブランド。それがアルファ ロメオなのです。
だって「アルファ ロメオはカッコいいことに命を賭けている」と思うから。実はこれ、私がアルファ ロメオに対して、30年以上持ち続けている、忘れられないキーワードなのです。さらに付け加えるなら、「クルマの購入動機は見た目が8割以上」。これも私が今のお仕事を始めてから、ずっと言い続けている信条です。
「あぁ、このクルマに乗りたい! このクルマが欲しい!」と思わせる性能。これを私は「デザイン性能」と勝手に名付けて呼んでいるのですが、これが弱いと、まずそのクルマとかかわってみたいと思いませんよね。そう、何も始まりません。見た目でピピッと来ないと、運転席に乗ってハンドルを握ってみようなんて、まず思いませんからね。でも、アルファ ロメオはこの性能が抜群に高い。全世界のクルマの中でナンバーワンなんじゃないかな? と思うくらいに高いんです。どこに置いても絵になる。ほんとに狡いなあと思うほどの魅力を持っています。
ステルヴィオは、今回のマイナーチェンジで、そのデザイン性能に磨きをかけてきたんです。3連式のフルLEDマトリクス・タイム・ライトなんかはまさにその象徴で、かつてのSZや1991年のプロテオ・コンセプト、最近でいえば159やブレラなんかにも通じる、ひと目見たら思わず虜になってしまうアルファ ロメオ伝統のカッコよさがあることにびっくりします。
ヘッドライトまわりと合わせてトライローブと呼ばれる三つ葉のカタチをしたフロント・グリルや左右のインテークのデザインもアップデートされているのですが、それだけではなくて、リアのテールライトもスモーク・タイプに変更されて、細部のデザイン性能もブラッシュアップされています。それからインテリアにも目を向けてみると、アルファ ロメオならではの2眼式のメーター・バイザーはそのままに、最新型のデジタル・クラスターメーターが採用されたりしています。
そんなステルヴィオ、ラインナップされるのはすべて4WDで、ガソリン車が2.0ターボQ4ヴェローチェ、ディーゼルは210馬力で470Nmの2.2リッター直4を搭載する2.2ターボ・ディーゼルQ4 Tiと2.2ターボ・ディーゼルQ4ヴェローチェがあります。今回は、ガソリンの2.0ターボQ4ヴェローチェで、夏が間近に迫る近場の海までドライブしてみました。
夏のワンシーンが似合うクルマ
考えたのは、「ある朝。いつもより早く目が覚めたので、フラリと海まで出掛けることにする。今日も変わらず、カーポートに佇んでいるだけで絵になる姿は、早くもポストカード級だと、毎度のことながらうっとりする。ドアを開け、運転席に身を沈めると、しっくりくるイタリアンレザーの感触。そこから眺める景色は、インナードアハンドルひとつとっても、艶めかしく輝いている…」と言った具合に始まり「緑を愛でつつ、スマートにワインディングロードを駆け抜けた後、海辺に止めて爽やかな風に身を任せた……」なんていうシーン。そんな朝のドライブが簡単に楽しめるところが千葉県にあるんです。富津岬というところなのですが、まあ、ワインディングロードはないけれど、早朝のすいた首都高速をステルヴィオで走るのは気持ちがいい。
ルートは、都心をスタートして、首都高速に乗り、湾岸線経由でアクアラインへ。木更津JCTを館山方面に向かい木更津南ICで降りて、あとは国道16号を富津岬へ。海ほたるSAからだと30分くらいあれば着いてしまう、超近場。国道16号は産業道路だけど、富津岬はそこだけがポツンと残ったオアシススみたいに自然がまあまあ残っていて、朝の海風はけっこう気持ちがいいのです。夏の海辺にたたずむステルヴィオって、素敵だと思いませんか? 他のクルマにはなかなか出せない、フェロモンさえ感じます。今の季節、そんな夏のワンシーンがなぜか似合う。でも実はこれ、見た目はもちろんのこと、そこに至るまでのドライビング・フィールに酔わせてもらっているからこそだったりするんですよね。
例えば、今回一緒にお出掛けしたステルヴィオ。名前の由来は、イタリアの北側にそびえ立つアルプス山脈の中にある、ヘアピンカーブが多いことで有名なステルヴィオ峠だそうですが、「これはきっと、その峠をいちばん走りやすいようにセッティングしたのだろうな〜」なんて、名前の由来に深く頷けるほどに、思った瞬間にグイグイ曲がってくれます。
誤解を恐れずに言っちゃいますと、普通はSUVをこんなにキレッキレのセッティングには仕上げません。SUVはディメンション上、全高も最低地上高も高く重心が上がりがち。あまりに攻めたセッティングにすると、センシティブになりすぎることが多いからです。
ところがステルヴィオは、これをいとも簡単にサラリとやってのけてしまいます。もちろん、この動きを許容するということは、ボディをガッチリ、足回りをしっかり取り付けることで、どんなシーンでも安定して路面を捉えられるよう、しなやかに足回りを動かしているからに他ならないわけですが、これをいかにも努力していますというようには見せないのはステルヴィオの、いやアルファ ロメオのこだわりですね。あくまでも、努力、一生懸命、ギリギリ、といったようなキーワードは見せずにスマートにこなす。だってその方がカッコイイからというわけです。
もちろん、パワートレインだってそう。低回転域からしっかりとレスポンス良くトルクを出し、いまここでパワーが欲しいという時に、キッチリとパワーを路面に伝えてくれて、その際の手応え感も十分。いい意味で一生懸命感がないのです。こちらも、だってその方がカッコイイからで決まりです。
いやはや、こんなSUV、他にお目に掛かったことありません。昨今世の中SUVブームで、ありとあらゆるブランドからSUVがリリースされていて、これからは個性を主張する時代なんて言われていますが、そんな中でも飛びぬけて声高に個性を主張しているのは、間違いなくステルヴィオでしょう。「これをはもう、背の高いスポーツセダンだよね!」と、言い切ってしまえるくらいのドライブ・フィールだからこそ、クルマと一体感を持ってストーリーを描ける。これはやはり、モータースポーツ由来のブランドだからこそでしょうね。
モータースポーツに求められるのは、基本性能の高さと、信頼性と、カッコよさ。それらが揃うからこそ求心力が生まれるわけですが、これはもう脈々と受け継いできたアルファ ロメオの血統みたいなもの。どんなカタチをしていたって、ドライバーにしっかりと操っている感を感じさせて、どんなシーンだってカッコよさを際立たせてくれる、サイコーの演出をしてくれる相棒になることは間違いありません。
見た目でハッと恋させて、乗れば乗るほどメロメロにさせる。これこそがアルファ ロメオの真骨頂。すっかり酔いしれてしまっても、後悔はありません。
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Text: | 竹岡圭 |
Photo: | 望月浩彦 |