2024.10.24
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ALFA ROMEO GIULIA / STELVIO TRIBUTO ITALIANO

アルファ ロメオの品質への探求と細部へのこだわり、そしてイタリアへの想いを表現した限定車「トリブート イタリアーノ」がジュリアとステルヴィオに登場。
今回は、ジュリア トリブート イタリアーノで実現したALFA™️アクティブサスペンションとQ2システムのコンビネーションが実現する、アルファ ロメオならではのスポーティなパフォーマンスを自動車ライター・嶋田 智之氏が解き明かす。

想像を超えたジュリアとの出会いを振り返る

2015年にジュリアがデビューしたときの興奮は、今も忘れられない。セダンとしての最新トレンドをしっかり踏まえながらも、これが自分たちの流儀といわんばかりに彫刻的な線と面で構成した、いかにもイタリア生まれらしいスタイリングデザイン。しかもそのシルエットは、どこからどう見ても後輪駆動でしかないようなプロポーションを描いていた。それまでの前輪駆動のアルファも間違いなく素晴らしかったと声を大にして言えるけど、それでも待望の、ひさかたぶりの後輪駆動モデル。操舵と駆動を切り離したクルマならではの楽しさと気持ちよさをアルファ ロメオで味わいたい、という欲望は気持ちの中のどこかに常にあった。

それだけじゃない。このために莫大な予算を費やして開発したジョルジオというプラットフォーム。フロントミドシップレイアウト。50対50の前後重量配分。11.8対1という聞いたこともないほどクイックなステアリングギアレシオ。アルファリンクと呼ばれるアルミ製サスペンション。カーボン製プロペラシャフト。軽量素材を使ったルーフパネル。すべて新設計のパワーユニット。……いや、並べ出すとキリがないのだけど、クルマ好きを悶えさせるには充分過ぎるほどの要素に溢れていた。まさに期待していた、いや、期待していた以上のアルファ ロメオがデビューしたのだ。

初めてジュリアを走らせたときの感激は、後に何度も塗り替えられることになるのだけど、今も生々しいまま記憶に残っている。ステアリングをスッと切り込んだときの、ノーズの反応。間髪入れずにイン側を鋭く刺し、そのまま貫いていくかのように感じられたものだった。実際にはホイールベース長めの安定方向にあるシャシーとしっかり鍛えられたサスペンションがその“超”がつくほどクイックな反応を巧みに受けとめて、ニュートラルな姿勢と安定感を保ったまま気持ちよくコーナーをクリアしていけるのだけど、“曲がる”ということがとにかく刺激に満ちていて、その鮮やかなハンドリングに、僕は一発で魅了されてしまった。予想を超えるクルマというのは稀にあるけれど、妄想を越えるクルマというものに出逢えることはほとんどないのだ。

こういうクルマは、イタリアからしか生まれない。

241023_013 イタリアの感性を具現化したジュリア トリブート イタリアーノ。アクティブサスペンション搭載でさらに磨き抜かれた躍動的な走行性能とは。

日本でデビューした直後の2017年のあの体験から7年ほどの時間が経ち、これまでアップデートされてきたその時々のジュリアで数え切れないくらいの距離を走ってきたけれど、あのときに自然に湧き出てきたその感覚には今も変わりがない。いや、むしろさらに深化してると言っていいかもしれない。

現在のジュリアのラインナップは、特別なモデルというべきクアドリフォリオを除けば、ヴェローチェのみ。マルチエアで制御される280ps/400Nmの直列4気筒ターボとシャシー・パフォーマンスのバランスがジュリアの中で最も優れていると、以前から好評価されることの多かったモデルだ。

そのヴェローチェをベースにしたスペシャルエディション、“トリブート イタリアーノ”が発売された。トリブート(=tributo)は直訳するなら“捧げ物、貢ぎ物”、転じて“尊敬、賞賛”を意味する言葉として使われる。つまりはアルファロメオのルーツの中のルーツというべき、イタリアという国そのものに敬意を表したモデルだ。

241023_001 イタリアの感性を具現化したジュリア トリブート イタリアーノ。アクティブサスペンション搭載でさらに磨き抜かれた躍動的な走行性能とは。

アルファ レッド、アルファ ホワイト、モントリオール グリーンの3色のボディカラーが用意され、それぞれルーフがブラックにペイントされるほか、19インチのホイールが濃いめの単色のグレイとされ、両サイドのミラーにイタリア国旗のトリコローレがあしらわれる。

241023_004 イタリアの感性を具現化したジュリア トリブート イタリアーノ。アクティブサスペンション搭載でさらに磨き抜かれた躍動的な走行性能とは。

インテリアに目を移すと、ダッシュボードやシート、ドアパネル、センターコンソール、アームレストなどに赤いステッチが流れ、シートも小さく丸いパンチングの奥側に赤が潜む仕立て、そしてフロントシートのヘッドレストには“Tributo Italiano”のロゴと、こちらにもイタリアのトリコローレが刺繍されている。

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241023_010 イタリアの感性を具現化したジュリア トリブート イタリアーノ。アクティブサスペンション搭載でさらに磨き抜かれた躍動的な走行性能とは。

文字にすると“たったそれだけ?”と思われるかもしれないのだけど、そのさりげないアレンジの組み合わせが、実はいい具合にほかのジュリアと異なる雰囲気を作り上げてるのだ。

ファッションの世界でもそうなのだけど、イタリアは華やかだったり鮮やかだったりはしても、実はド派手なモノは少なく、さりげないセンスの数々でこちらの気持ちを持っていくようなモノが多い。そういうところの感覚は、見事なまでに大人。このスペシャルエディションからもそうした感覚が感じ取れて、個人的にはとても好感を抱いている。

けれど、ハイライトはそこではなかった。このトリブート イタリアーノには、クアドリフォリオ譲りのALFA™️アクティブサスペンションが備わっている。アルファ特有のDNAモードに連動し、電子制御で減衰力を調整してくれる仕組みだ。

241023_009 イタリアの感性を具現化したジュリア トリブート イタリアーノ。アクティブサスペンション搭載でさらに磨き抜かれた躍動的な走行性能とは。

241023_008 イタリアの感性を具現化したジュリア トリブート イタリアーノ。アクティブサスペンション搭載でさらに磨き抜かれた躍動的な走行性能とは。

だから、乗り心地がとてもいい。スポーツセダンだからフワフワのフカフカなんてことはないのだけど、路面の荒れによる凹凸、段差、うねりといった本来なら乗員に不快な衝撃を与える要素を、すんなり綺麗にいなしてくれる。しかも、そうした外乱に差しかかったときのサスペンションの動きは実に滑らか。そうした箇所を踏み越えることは伝わってくるし、タイヤがしっかり接地してることもはっきり伝わってくるのに、衝撃らしい衝撃としては伝わってこない。とても快適で、往復400kmほどを日帰りで走っても、いかにもプレミアムセダンらしく疲れが素晴らしく少なかった。

DNAのダイヤルで走行モードをダイナミックにすると足腰が一気に引き締まって、コーナーをより速いスピードでスパッと抜けていくアルファ ロメオらしい乗り味に生まれ変わる。が、そうしたスポーツドライビング向きのモードに切り換えて速度域を上げていっても、サスペンションは上下動こそ素早くなるものの伝わってくるフィールとしてはしなやかで、乗り心地が悪くなったとか硬くなったという印象はない。より気持ちよくコーナリングを楽しめるけど、乗り心地は快適といえる範疇にある。それは優れたグランツーリスモとしての絶対条件ともいえるものでもある。

そしてこのトリブート イタリアーノでは、アクティブサスはQ2システムと呼ばれるアルファ ロメオ独自のリミテッドスリップデファレンシャルと組み合わせられることになる。

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というのも、不思議なことにあまり知られてないようなのだけど、実は2022年5月に上陸したモデルから、ヴェローチェにはこのQ2システムが標準で備わっているのだ。簡単に言うなら、エンジンが生み出すチカラを無駄なく正確に路面に伝えて駆動力へと変え、コーナリングにまつわる減速・旋回・加速のいずれの場面でも安定性とコントロール性、もっと言い換えるなら曲がる楽しさを確保するために、後輪左右のタイヤへのトルク配分を適切化する仕組みだ。

僕はこのQ2システムとALFA™️アクティブサスペンションの組み合わせこそがジュリア最強のシャシーだな、と感じてる。このコンビネーションは2022年1月に発売されたスペシャルエディション、ジュリアGTジュニアで初めてお目見えしたもので、以来、幾つかのスペシャルエディションに採用されてきた。以前に何度かこの組み合わせを体験してるのだけど、当然ながらこのトリブート イタリアーノでも同じように感銘を受けた。

いや、曲がる曲がる。気持ちよく曲がる。ノーズがスパッと内側を刺し、リアが瞬時に追従し、その瞬間からドライバーに結構な横Gを感じさせながらグイグイとラインをトレースしていき、素早くコーナーから脱出していく。その間4つのタイヤはしっかりと路面を捕らえ続け、いわゆるアンダーステアやオーバーステアは、よっぽど物理の法則を無視したドライビングでも試みない限りは微塵も顔を出さない。コーナリングパフォーマンスはお見事! のひと言に尽きる。

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いや、そもそもジュリアのシリーズは総じて乗り心地もいいし、曲がる楽しさはピカイチだ。そのままでも充分に当代随一のスポーツセダン、である。けれど、このアクティブサスとQ2システムのコンビネーションは、それをもう一段階高いところへと押し上げてると表現しても過言じゃないほど。有無をチョイスできるのであればこちらを選びたくなるのも、自然の道理だろう。

それにしても、相変わらずいいエンジンだな、と感じる。パワーも充分だし、トルクもたっぷり。穏やかに走りたいときにはその豊かなトルクがしっかり支えてくれるから余裕綽々な気持ちでいられるし、元気よく走りたいときには頭打ち感なくシャープに吹け上がっていく勢いに任せ、爽快な加速力と気持ちよく伸びていくスピードを堪能することができる。ダウンサイジング系ターボのエンジンには低中回転域ですべてを完結させて高回転域を重視しないものも多いけど、ヴェローチェのこのエンジンは高回転域まで回す楽しみをちゃんと楽しめるのだ。レッドゾーンが5500rpmからと低めであることを揶揄する向きもあるけれど、大切なのは何回転まで回るかじゃなくて、どう吹け上がってどう回るか。その点、ヴェローチェのパワーユニットは及第点を優に超えていると僕は思う。

241023_019 イタリアの感性を具現化したジュリア トリブート イタリアーノ。アクティブサスペンション搭載でさらに磨き抜かれた躍動的な走行性能とは。

おそらく錯覚じゃないと思うのだけど、エンジンのサウンドも初期の頃のモデルと較べてさらに歯切れがよくなってるように感じられる。エンジンの回転感もステアリングのフィールも、滑らかさを増してるように思う。実は別のタイミングで試したメカニカル・サスペンションのジュリア ヴェローチェの乗り心地も、しなやかさを増していた。デビューから9年め、日本上陸から7年め。ジュリアはマイナーチェンジや年次改良などによって目に見えないところもしっかりと進化し、もはやジュクジュクに熟してる。そしてアルファ ロメオのジャン=フィリップ・インパラートCEOも公言しているとおり、2026年あたりに次世代モデルへと切り替わるわけだ。

ジュリアを手に入れるなら、まさに今。

そう思えてきてならないのだけど、このタイミングで登場したトリブート イタリアーノこそが、その最適解となるのかもしれない。ただし、ジュリアは日本ではたった74台の限定販売(ステルヴィオ トリブート イタリアーノは28台 )。気を惹かれている人は、それこそ明日にでもショールームを訪ねるべきだ。限定車ゆえに試乗はできないだろうが、乗らずに手に入れても、余程のことでもない限り後悔することにはならないはずだから。

ALFA ROMEO GIULIA / STELVIO TRIBUTO ITALIANO

Text: 嶋田智之
Photo: 望月勇輝(weekend.)

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