2023.8.3
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イタリア中部トスカーナ州シミニャーノ。森に囲まれた村の奥に、ひときわ大きな館がそびえている。19世紀にはイタリアを代表する発明家のひとりも住んでいたという建物だ。そこに住まう、カルメロ ・ブルファマンテさん(1990年生まれ)は、百数十年続く由緒ある農園の若き経営者である。伝統を重んじる地方で、彼が最新のアルファ ロメオであるトナーレ プラグインハイブリッド Q4に惹かれたわけは?

父が突然「イモラ」と帰ってきた日

カルメロさんにとって、最初のアルファ ロメオとの思い出は、少年時代にさかのぼる。「父は、それまで乗っていたクルマよりも、より大きなイタリア製ベルリーナ(セダン)を検討するため、販売店に出向きました。しかし、同じショールーム内に展示してあった赤いアルファ ロメオ33イモラにひと目惚れしてしまったのです」。33とは、1983年から95年まで存在した前輪駆動の小型車である。イモラは、イタリア・ロマーニャ地方のF1サーキットの名前にあやかったもので、1992年に設定された高級バージョンだった。美しい赤のボディカラーと、ブラック基調の内装、円形基調のダッシュボードに、カルメロさんの父は“やられて”しまったのだという。「イタリア人が好むスポーティーなムードが、そこにあったのです」

結果として、当初の目当てだったモデルよりもひとまわりタイトなボディサイズだったにもかかわらず、カルメロさんの父はその33を購入した。「父が販売店から33イモラのキーを受け取って帰ってきた日、当時6歳から8歳だった私たち3人兄弟は、皆で歓喜の声をあげたのを覚えています」

以来、毎年夏は父親の郷里であるシチリア島のパレルモ近郊まで、旅をするのが恒例行事となった。私たち兄弟は33イモラに放り込まれて、片道1200キロメートルの海峡越えドライブを毎年繰り返しました」。当時のイタリア本国仕様車の常で、エアコン未装着なうえ、前述のように室内は黒だったので、暑さはかなりのものだったという。しかし、戦後アルファ ロメオ史に残る小型車アルファスッドから引き継いだ水平対向ボクサーエンジン独特の音を響かせて、意気揚々とアルファ ロメオ33を操縦する姿は、今も瞼にしっかりと焼きついている。「父がアクセレレーション・ペダルを踏むたび、感激していたものです」

02-33Permanent41991-1994 イタリアのオーナーインタビューVol.2 トナーレ プラグインハイブリッド Q4 | 自身のジョブに通じる「伝統の継承」と「革新」イタリアのオーナーインタビューVol.2

▲アルファ ロメオ33。写真はパーマネント4仕様(1991-1994年)

始まりから、忘れ得ぬ体験

カルメロさん自身は2008年に18歳で免許を取得すると、フィアット500で運転を始め、その後アルファ ロメオ・ブランドと同じステランティス・グループが造る他ブランドを乗り継いだ。トナーレに関心を抱いたのはきわめて早かったという。
「2019年ジュネーブ・モーターショーのテレビリポートを観ていたときです。参考出品されたトナーレ コンセプトに私の目が釘付けになりました。同時に、いつかガレージに収めることを決意しました」とカルメロさんは熱く語る。

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▲アルファ ロメオ トナーレ コンセプト(2019年)

プラグインハイブリッドを選択した理由についても聞いてみる。

「それまで私はターボディーゼル・エンジン搭載のSUVに乗っていて、そのトルクや燃費に十分満足していました。ですから、次のクルマもディーゼル仕様を、とぼんやり考えていました」
そうした折、馴染みのセールスパーソンから、憧れのアルファ ロメオ トナーレの試乗を勧められる。当日ディーラーに用意されていたのは、発売されたばかりのプラグインハイブリッド Q4だった。
ディーゼルとは異なる意味で燃費効率に優れた機構であることは理解できたが、その走りは未体験だった。

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▲「SUVでありながら、使いやすいサイズと、アルファ ロメオらしいスポーティネスを実現しているところが、トナーレを傑作たらしめています」

「市街地から環状道路に入ったときです。彼に勧められるままDNAセレクターをD(ダイナミック)モードに入れ、これまた言われるままペダルを踏み込みました」。その瞬間、フロントエンジン+後輪モーターによる280馬力・4輪駆動に切り替わった。「エンジンサウンドの変化とともに、過去に感じたことのない、異次元の加速感に包まれました。思わず口に出してしまいましたよ。『これ、買います!』ってね」と、カルメロさんは笑う。

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▲隣町に至るワインディングを楽しむ。

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▲D.N.Aドライブモードシステムのなかでも、最大限のパフォーマンスを堪能できるDモード。

1か月後、カルメロさんのトナーレ プラグインハイブリッド Q4はやってきた。
「視界良好なSUVでありながら、コンパクトなサイズなのはきわめて良心的です。エクステリアで最も気に入っているのはフロントフェイスです。子ども時代に憧れてやまなかった『ブレラ』を彷彿とさせるからです。ドアミラーに埋め込まれたイタリア国旗のトリコローレも、見るたび嬉しくなります」

いっぽうインテリアも、「他国のブランドにはない、美しさが漂っていますね」と手放しで称賛する。とりわけ気に入ったのは、歴代アルファ ロメオのムードを反映させたデジタルメーターだという。「シートも同じです。父が乗っていたアルファ ロメオの、黒の精悍なシートをすぐに思い出しました」と語る。「さらにトナーレの場合は換気機能付き。ビーチで炎天下に駐めておいたあとも、信じられないくらい快適です。父の33の暑さとは天地の差です(笑)」
カルメロさんは、リアシートの広さにも満足している。「2人の子どもは3歳と7歳。チャイルドシートを設置するのに十分なスペースがあります。ラゲッジルームも同様。先週までヴァカンスに行っていましたが、家族4人・2週間分のヴァカンス・グッズを、いとも容易く飲み込んでくれたのには驚きました」

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▲ヘッドレストにさりにげなく刺繍されたロゴ。その奥ゆかしさが、かえって心を動かすとカルメロさん。後席にはチャイルドシートを装着している。

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▲4.2平方キロメートルにおよぶ敷地に続く門で。

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▲左右ドラミラーに誇らしげに添えられたトリコローレもお気に入りだ。

「バッテリーへのチャージは主に自邸の家庭用電源で毎晩行っています」。そう言いながらカルメロさんは、邸内からケーブルを伸ばして実演してくれた。ちなみに館の壁には19世紀、今日のファクシミリの起源を発明したイタリア人ジョヴァンニ・カゼッリが住んでいたことを示す石板が掲げられている。
「平日はほぼ、EVモードで済ませています。ガソリンの給油は、私の使い方では、月に1回といったところでしょうか」。続いてカルメロさんが語ったのは、今日における“速さ”の意味だった。「イタリアでも、ハイスピードを楽しむことは難しくなっています。アウトストラーダ(高速道路)も、最高時速は130キロメートルに制限されています。そうしたなか、トナーレ プラグインハイブリッド Q4による、あらゆる速度域からの刺激に満ちた加速は、絶対的なスピードに変わる新たなドライビング・プレジャーといえます」。そのうえで、カルメロさんはこう続けた。「さらに電動化が進んだとしても、私はアルファ ロメオを選びます。あとはイタリアで、もっと公共充電ステーションが増えてくれることを願っています!」

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▲チャージは毎晩、邸内で行っている。「平日はほとんどEVモードでこなせます」。

ところでアルファ ロメオの日本におけるコミュニケーションのスローガン「Unforgettable Experience」である。それを最も早く得られるのは「とにかく乗ってみることです」と力説する。「できればワインディングを試してみることです。4本のタイヤは常に路面をつかんで離さず、コーナーは出口まで、あなたを確実に導いてくれます。そのサスペンション・セッティングの優秀性は、きっとあなたに感動を呼び起こすはずです」。そしてこう続ける。「そこに、イタリアらしい美しいデザインが加わります。つまり始まりからして、忘れ得ぬ体験なのです」。ちなみにカルメロさんは、トナーレ プラグインハイブリッド Q4を父に見せに行ったという。「父は感嘆の声を上げました。『おお、アルファ ロメオはアルファ ロメオだ!』と」

共感できるブランド

カルメロさんは、1890年創業の農園「ベッツィーニ」の4代目経営者である。その名を世界に轟かせているのは、“幻の黒豚”といわれるチンタ・セネーゼの飼育だ。Cintaとはイタリア語で帯のこと。腹の部分に白い帯状の毛があることに由来する。古代品種であり、画家アンブロージョ・ロレンツェッティによる14世紀のフレスコ画《農村における善政の成果》にも描かれている。しかし、後世になると生育の遅さ・繁殖力の低さなどが生産性優先の時代にそぐわなくなり、一時は絶滅の危機に晒された。

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▲ハム、サラミ、そしてワインを納めた「ベッツィーニ」のカンティーナ(蔵)で。4代の家族写真がディスプレイされている。

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▲ベッツィーニのチンタ・セネーゼは、世界の高級リストランテやグルメたちから高く評価されている。

ベッツィーニ農園は、そうした手のかかるチンタ・セネーゼを130年以上にわたり地道に手掛けてきた。飼育は4.2平方キロメートルにわたるフィールドに完全放牧している。その肉から作るプロシュート(ハム)やサラミは脂身の甘さ・溶け具合など、独特の味をもつ。それらを最大限に引き出すため、保存料は一切加えない。

チンタ・セネーゼを手掛ける他農園も含め、彼らの努力によって2015年には欧州連合(EU)の原産地名称保護制度(DOP)に指定された。今日、ベッツィーニはチンタ・セネーゼ農園のなかで最大級の規模を誇る。プロシュートとサラミは輸出にも回され、うち3分の1は日本向けだ。2005年からはアグリトゥリズモ(農園民宿)も開設。イタリア食文化の真髄を求めて村を訪ねる、国内外のグルメたちを歓迎している。

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▲「若い頃は、アルファ ロメオGTVを2台も乗り継いだよ」という義父(右)と。

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▲アルファ ロメオ ブレラ(2009年モデル)。青年時代に憧れた同車を彷彿とさせるフロントフェイスも、トナーレに決めたきっかけだった。

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▲チンタ・セネーゼの傍らで、薬草も手がけている。その日は天日乾燥させていた。

「チンタ・セネーゼは絶滅の危機を乗り越えてきました。アルファ ロメオというブランドも歴史上、いくつもの苦難を経験し、強くなりました。私の仕事で大切なものは規模の大きさではなく、歴史、品質、伝統を継承する責任、そして新たな時代に向かっての革新です。トナーレ プラグインハイブリッド Q4からも、それに対するリスペクトを感じられるのです」。カルメロさんはそう答えてから再びDモードに切り替え、ひまわり畑が続くワインディングの彼方へと消えていった。

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▲村内で。「チンタ・セネーゼ注意」の標識は、カルメロさんが自作し、寄付したもの。

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▲「初めてステアリングを握った日から、忘れ得ぬ体験は始まります」とカルメロさん。

トナーレ プラグインハイブリッド Q4特設サイトはこちら


report 大矢アキオ Akio Lorenzo OYA
photo Akio Lorenzo OYA/Mari OYA/Alfa Romeo
coordinate Alessio Cappannoli

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